フェルヴァリオの答えのあと、墓守は何も言わなかった。
沈黙は、ただの空白ではない。
無音が、音よりも鋭く胸を刺す。
白い部屋はさらに白く、夜そのものが呼吸して、
静寂に重さを与える。

「“続き”をどう思うかは、
きっと君がどれだけ死を近くで見てきたかにも
関係している」
淡々と、墓守は石碑を撫でるような声で言った。

「死は、概念のままでいるうちは扱いやすいものだろう。
言葉に出来るし、考えとして整理する事も出来る」
カンテラがカラン、と小さく鳴る。
青い灯が宵闇をひっかき、問いを落とす。

「それが“自分の傍”に立った瞬間──
死は、途端に重さを持つ」

「君は死を見つめたことがあるかい?」

「誰かの抽象でも、観念でもなく。自分や、誰かのすぐそばにあるものとして。」
⸻
フェルヴァリオは、すぐには言葉にならなかった。
喉の奥に、
凍りの欠片が引っかかったみたいで。

「……たくさんあるね」
声は、焰の奥から押し出される。

「なんなら──
いまも多分、見つめてる。」
錬金術で使う素材そのまんま。
天秤に載せると、空気が変わる。
ひとつ間違えれば、命が燃え落ちる。
瞬間の圧、気配。
空気が迫ってくる⸻
喉をきゅっと締めつけ、呼吸を奪う。
波のようだった。
押し寄せてきて、逃げ道を消し、追いつかれる寸前の息苦しさ。
思わず、手を伸ばしたくなる。
何かにしがみついて、自分がまだ「生」に居る証を確かめたくなる。