Chapter06-01

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

相も変わらない様子の白い部屋には
いつも通り椅子が一つだけ。
座らずとも、答えずとも、あなたが望めば元の場所には戻れよう。
もし座るのならいつも通り──壁が開けて、〝向こう側〟に姿がひとつ。

そこにいるのは──人型ではあったが、どこか人らしくないものだった。
白い部屋の中、静かに座っているその姿は真っ黒な影法師のよう。
人では無く、どこか──夜そのものがそこに居るような、そう思わせる姿であった。

奇妙なものではあるが、それはきっとあなたを恐れさせるものではなく、
どこか安心感のあるものに感じられるのかもしれない。

夜空に月が浮かぶように真っ白な顔、
あなたの事をじっと見据えるひとみは夜の色。
驚く様子も慌てる様子も無く、そこに静かに在った。

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「やあ。いい夜だね」

中性的な声は響かず静かなもの。
あなたの言葉を待つように暫くじっとあなたを見詰めた後に、
ややわざとらしく、人間を模すように首を傾げる。
今までの問い人と同様、あまりあなたの事を正確に認識出来ていないのだろう。

とはいえ、ソレにとってその事はさして問題ではないらしい、
様子を窺った後、まっくろな口を開く。

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「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
 ──ひとまずコレの事は『墓守はかもり』と呼んでくれればいいよ。
 本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」

コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

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君にとって死は、どれぐらい遠いものだろう?

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「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
 いつでも首筋に感じるものだろうか。
 それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」


──あなたにとって死とはどれぐらい遠いものですか?
Answer
 真っ白な部屋。
 椅子がひとつ。

 腰掛けた瞬間、無音のまま壁が割れた。
 しかし、そこに立つのは人ではない。

 黒。
 ただの黒。
 夜そのものが、四肢を持ったような影。
 声だけは滑らかに人語を模していた。

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「やあ、いい夜だね」

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「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
 ──ひとまずコレの事は『墓守』と呼んでくれればいいよ。
 本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」

 コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
 墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
 手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
 枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

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「君にとって、死はどのくらい遠いものだろう?」

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「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
 いつでも首筋に感じるものだろうか。
 それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」



 フェルヴァリオは何気なく見返したつもりだった。
 だが、視界の端に押し寄せる。

 氷原。
 深い雪。
 赤い染み。
 寒さ。
 身体がきしむ音。

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(あっ……うっ……)

 耐えきれず、喉の奥が詰まる。
 焰が、掌からぼっ、とこぼれた。
 温度を確かめる。本能の調整のように。
 ゆっくり言葉を選ぶ。

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「……俺にとっては
 死は、遠くも近くも、あるよ」

 竜として、終わりは果てしなく遠い。
 けれど、錬金術師として、死は毎日の素材だ。

 全部がフェルヴァリオの声音ににじむ。
 夜の影は、かすかに揺れた。