
「私はね……愛って、とても厄介で、
でもどうしようもなく惹かれるものだと思うの。
血みたいに温かくて、時間みたいに残酷で、
それでいて、どんな者でも変えてしまう」
あなたの言葉を聞いて、吸血鬼はぽつりと自身の考えを零す。

「あなたの言う事はきっと正しくて、
それでいて間違っているのでしょう。
明日のあなたに訊いたら、5年後のあなたに訊いたら、
5年前のあなたに訊いたら──きっと違う答えが来るの。
愛ってきっと、それだけ不確かな事だわ」
彼女は細い足を組み替え、椅子の背に体を預ける。
真っ白な部屋の中で、その赤い瞳だけが深い影を帯びていた。

「そう思わない?」
軽く首を傾げて笑うと、その笑みはころころと転がるように形を変える。
無邪気にも見えて、どこか深い絶望すら含んでいるような、不思議な笑み。
やがて吸血鬼は小さく手を合わせ、軽い音を鳴らした。
その一拍で、空気がまた別の問いへと向きを変える。

「さ、次の問いに行きましょう?
あなたは──愛に伴う不自由さについて、どう思う?」

「縛られる側としてでも──縛る側としてでも、
どちらでもいいわ。少し考えてみて?」
──あなたは愛によって自由が縛られる事についてどう思いますか?