あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。
変わらぬ様子のその部屋の、ただひとつの椅子に腰を掛けると──
あなたの向かいには、まず鮮やかな赤色が揺らめくように浮かび上がる。

「──あら。今日も来てくれたのね?」

「それとも〝今日のあなた〟は初めてのあなた?
一体此処の時間軸はどうなってるのかしら、本当に面白いわ」
くすくす、と透明な鈴のような笑い声。
少女の姿をしたそれは、あなたを値踏みするでもなく眺め、
こちらの反応を楽しむように言葉を紡ぐ。

「あなたも分かっているでしょう?この部屋はいつでも
同じところに戻る事ができるのよ」

「思索を重ねた後、また同じ質問に答えたいとき、
そうあなたが望むなら、あなたはまた同じトイカケを受ける事が出来る」

「──考えは日々変わるものよ。
常に同じ答えを出し続ける生き物なんてきっと存在しないわ。
今を語る、今を自覚する、そのためにこの部屋を使えばいいのではなくって?」
歌うように紡がれた言葉は、どこか甘く、どこか寂しい。
まるで無窮の眠りの中で、何度も同じ思索を拾い直してきた者の声音のようだった。

「私はアマリエ。とある世界の吸血鬼よ。
ずぅっと昔に封印されてるから、きっと誰も私を知らないわ」
さらりと自己紹介を流し、あなたの名前を問う事はしない。
いつかに知ったのかも知れないし、この部屋の性質を知っているが故
わざわざ訊く必要も無いとしているのやもしれない。
そうして吸血鬼は、何も迷う事も無くトイカケを紡ぎ出す。

「私はずっと同じ事を問い続けている。
一意に定まる答えが無いと知っているけれども、
それでも追及する事に無駄は無いと思っている。
あなたにとって答える価値が無いなら目を閉じてご覧なさい?
きっと元のところに戻れるわ」
ふと、吸血鬼の紅い瞳があなたを真っ直ぐに射抜く。
その奥には、何百回も、何千回も、この思索を繰り返してきた気配が宿っている。

「ねえ、あなたにとって──愛ってどんなもの?」
──あなたにとって愛とは何ですか?