Chapter03-05

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-21 04:39:12

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あなたの言葉に黙って頷きながら、
思考を深めるように髪を弄る手の動きは止まっていた。

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「……価値、なんて偉そうな言葉を使ったけどさ」

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「結局、自分がその生き方で満足できるかどうか
 みたいな話、な気もしてくるね」

短く言葉を切りながら、息を吐く。
沈黙は、ただ心の中を整理する時間のようだった。

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どうすれば、満足って思えるんだろうね

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「もちろん、簡単に“ああ、これで満足!”って思えれば楽なんだけど……
 現実はさ、どんどん次が出てくるし、思い描く理想と現実の間に隙間があって……」

小さく肩をすくめ、思い出したかのようにまた手が髪を弄った。

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もうこれでいいって思える瞬間……、
 クロは、経験ある?……どうすれば自分が満足できるかって、分かる?」


──あなたにとって“満足”とは何だと思いますか?

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「……“満足”って多分、別にゴールじゃないんだよね」

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「結局“ああ、今ここで自分のやりたいことできてるな”って瞬間のこと……なのかも。
 誰かに褒められたり、認められたりすることだけじゃなくて、
 ただ自分の心が納得してるっていうか」

髪を指先で絡めた手をそっと下ろし、視線を落とす。

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「だから、ウチにとっての満足って、“ずっと続くもの”じゃなくて、
 小さくて短いけど、自分の心にちょっと灯がともる瞬間のこと……かな、と思う。
 其れを積み重ねられる可能性が高い行為を、価値、と呼べるのかもなぁ……」

軽く息をつき、椅子にもたれて肩の力を抜く。
ふ、と視線があなたに戻り、問いかけるように目が揺れる。

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「クロはさ……そんな瞬間、ある?
 自分の中で、これでいいって思える瞬間って、どうやったら掴めると思う?」

Answer
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ひとみん
「これでいい…ね……あたしは、自分の満足とかどうでもいいかな。大切な人が満足してくれればそれだけであたしは満足だし。」

本当に言葉の通りで。さっきダラダラと考えていたように、とにかく、2人に笑顔があれば、私自身が不幸であっても、それだけで満足だった。

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ひとみん
「だから多分…人の幸せがあたしの幸せだから…大切な人の満足があたしの満足かな。まあ、その人達がいなくなったらあたしは生きる理由も、意味もなくなるから死ぬしかなくなるし。…だから満足とかじゃなくて、大切な人が喜び続けて欲しいなってずっと思ってる。」

喜び続けて欲しかった。

家には、減らなくなったお酒の瓶が何本もある。
わざわざ私自身が手をつけてしまわないように、戸棚にしまってある。

またヘラヘラと笑いながら帰ってきてくれたら。
帰ってきた時、家の床に空き缶や空き瓶なんかが無造作に転がしてあるのが増えてたりしたら。

冷蔵庫にも、減らなくなったデザートなんかがたくさんある。
どうしても食べる気になれなくて、いくつも消費期限が切れてしまっている。かと言って捨てる気も起きない。

明日、起きたときに冷蔵庫が開けっぱなしになっていたら。
野菜室に入れてあった傷みかけの苺が忽然と姿を消していたら。

毎日、そう思ってしまう。
私じゃない誰かがいた日常が、二度と戻ってこないんじゃないかと言う予感が、背中にべったり張り付いて、不快感を増してくる。

とにかく、もう直ぐ終わるであろう問答に早く終わりをつけてほしくて、それ以上私は何も言わなかった。