Chapter03-04

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-21 04:39:12

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女はじっとあなたの言葉を聞いて、それで、
ふ、と何かを思ったようにあなたに視線を向ける。

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「……あのさ。
 誰かのために生きるって、なんか難しいと思わない?」

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「ああごめん、急にさ。でも……ウチ思うんだよね。
 期待されて、期待に応えようと頑張るじゃん?
 勿論そりゃ、応えるのって義務じゃないけど……出来れば応えたい、じゃん?」

自分の指先でもてあそぶ髪の毛が、ゆるく揺れる。
その指先は、癖のように、逃げ道のように、同じ束を何度も撫でていた。

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「誰かのために頑張るのって、嫌いじゃないんだよ。
 でもさ、その“誰かに似合う自分”を続けなきゃいけないのが、ちょっと怖い」

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「ウチ、そんな器用じゃないし。
 似合う自分のサイズ、毎回ぴったりじゃないんだよね。

女はくすっと笑う。
その笑いは軽いのに、どこか無理に持ち上げた声色だった。

そして、あなたを少し覗き込む。

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「クロは、自分の価値ってどこに置いてる?
 ……他人をどれだけ、自分の価値に使ってる?


──あなたは、自分の価値に他人の評価をどれだけ使っていますか?

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「“誰かのために”動こうとするとさ、
 結局ウチ、自分がしんどくなっちゃうんだよ。
 都合よく使われてる感じ、というか……」

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「でも逆に、全部“自分のため”だけにすると、
 それはそれで空っぽになるんだよね。
 なんかこう……味のしないガムを噛んでる感じ」

だから、と言いかけた口を噤む。
ちょうどいい言葉を探す様に視線が白い天井を揺れて、
ああ、と小さな声を零して、ようやくあなたに視線が戻った。

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「……誰かのために頑張るのって、
 “その人に向けた”自分の“好き”って感情なのかもな」

それで、少し照れくさそうに笑う。

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「ウチは、その“好き”が続けられるかが自分にとって大事……だと思う。
 相手が好きって事……じゃなくて、好きって感情を持てる自分のほう。
 “好きを与えられる自分”、が一番価値がある、と思う……のかな」

うまくまとまらないや、なんて苦笑気味に言った後、
息を細く吐き、椅子にもたれ直す。

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「……ま、そんなに上手くいかないんだけどね、現実は」

Answer
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ひとみん
「ん〜そうかなあ?…所謂さ、ありのままの自分を好いてもらえないかも…みたいな恐怖感があるってことでしょ?でもそれってさ、相手は自分のこと何にも見てくれてなくない?そんな自分を歪めてまで隣にいたい人なのか、今一度ちゃんと考えてみた方がいいと思うぞ。」

私は、ありのままの自分が許せなくて、自分から逃げてきた。
髪も、顔も、名前も、何もかもを変えて。

けれども、あの日。ありのままの私でいい、なんて、わざわざ私を選んでくれたあの2人は、多分一生忘れないと思う。

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ひとみん
「まあでも…困るなら…そうだな…その人にしてあげたいこと、と、その人がして欲しいって思ってることを、毎回天秤にかけて…優先度が高い、とか、こっちの方が喜びそう、とか、私はこうしてあげたい、なんかを考えて行動したりすれば…いいんじゃないかな。」

なんて、心にもないことを言ってしまって。これが正しいかなんて、私にはわからない。
けれども、それでも、続ける。話して欲しいなら、聞かせて欲しいならと、言葉をどんどん綴っていく。

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ひとみん
「…でも…ごめん、あたしは逆に、人のためを見つけないと生きられないから…。あんまし参考にはなんないかも。………さっき失敗したって言ってたじゃん。も一つ、めっちゃでかい失敗もしててさ。……そんで、そん時にもう、自分の人生、どうでも良くなっちゃって。」

少し後ろ暗くなる。
私は、全てを置いて逃げてきたようなものなのに、あんなに幸せをもらってしまって。

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ひとみん
「でも…現れたんだよね。この人たちになら人生捧げてもいい、って思った人が。
だから…あたしは、今は人に生かされてるよ。…その人達の笑顔が見たいから、役に立ちたいから、それが頑張ろうってエネルギーになって、それだけであたしの価値になる。…大切な人達のありがとうが、あたしが生きてていいって言う価値をつけてくれるんだ。」

まあでも、そんなことをしていたから、多分取り上げられたんだろう。

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ひとみん
「だから、最初シロが言った誰かのため生きてるって言うのがあたし、なんだよね。」

2人に出会うまでは、いつ死のうか、どこでどうしようか、なんて考えが頭の中を支配していた。

終わりの見えない借金に、親への申し訳なさから、毎日抜け殻のようで、でも、親にこれ以上迷惑をかけるわけにいかない、と、日々身を粉にして働いていた。

そんな中で、出会った。傷だらけの彼に。

また出会った。今度はその彼が、私を信用してくれていたのか、道端にいた人を拾ってきた。

そんな頃からだ、毎日に色がついて、死にたいなんて思わなくなって。

ずっとこの日常が続けば。ずっとこんなでいられたらなんて。
思ってしまった。思ってしまったんだ。

今でも、親以外で言うならばあの2人以外のために生きるなんて、考えられない。
実際、親よりも優先度は高かった。

毎日ちょっとずつ無駄遣いしたり。
そのせいで光熱費が払えなくなって止まりそうになって慌てたり。
でも、結局全部なんとかなったのは、2人がいたおかげだから。

私は、他人…その中でもあの2人以外の評価無しには、生きていけないんだ。