Chapter03-01

記録者: レーゼル (ENo. 74)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

クリックで開閉
あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

またあの部屋に来たようだ。
小さな部屋には相変わらず椅子は一つきり。
壁を向いた椅子の先には、やはり何も見えない。

──あなたが椅子に座れば、
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。
三角に身体を縮めて座っていた
長い髪を気だるげに結んだ白い服の女が、
あなたに気付いた様子で緩慢に顔を上げた。

icon
「……えー……なんか居るんだけど。どゆこと?」

icon
「あー……まあ……ども。
 名前とか……あー…じゃあ、シロでいいや、この部屋白いし。
 君は……じゃあクロ。なんかぼんやりしてるし」

知らないもの同士、名前を名乗るモンでもないでしょうと。
シロを名乗った女は畳んだ身体をほどいて、
んん、と小さな声を漏らしながら伸ばす。

icon
「……こーいうのって、なんかあったよね。
 白い部屋に閉じ込められて……なんか……出られない部屋的な?
 初対面でこんなんされてもおもんねー……」

icon
「なんかこの白さ落ち着かねー……、
 内側をざわざわ触られてるみたいなー……。
 なんでこんなとこにウチら集められたんだろ。おもろい話なんてできねーっつの……」

嘆息ひとつ零した後、
白い部屋の隅の方に目を遣って、女はぼやく。

icon
「まー……夢ん中……なんかな。何話してもいいっちゃいいのか。
 クロだってウチの無意識が作った偶像みてーなもんかもだし……
 返事返って来るかもわかんねーし、適当こくか」

女は髪を束ねているリボンをいじる。
それは落ち着かない子どものようであり、退屈を紛らわせる大人の仕草にも見えた。

icon
「クロはさ、生きる理由とかって何だと思う?


──あなたには生きる理由はありますか?

sample
icon
「別に生まれた時点で生きる理由とか要らね―とは思うけど、
 あった方がちょっと嬉しいというか、豊かな気がするんだよね。
 親が望んだから生まれた、以外の意味があった方が……なんかいいじゃん?」

言いながら、女はリボンをきゅっと締め直す。
その指先だけは、妙に確かだった。

icon
「生きる理由ってより人生の目的……って言う方が正しいのかも。
 小さい時からなんか、皆と一緒に~とか、大人の言う事を聞け~とかで
 結局どう生きたいかって全然分かんないなーってさ?

 ガチガチに矯正したくせに、急に「自分のやりたい事をやれ」って放り出されて、
 なんかそのまま今になっちゃった、みたいなさ……」

あなたをじっと覗き込む。
その視線は、答えを求めているようで、ただ誰かと共有したいだけのようでもあった。

icon
「クロはそういうのあんの?
 ウチも生きる理由っての──拾えるもんなら拾いたいんだよね。……皆目的に向かって歩いてるのに、
 ウチ一人だけ足を止めてる気がして、怖いからさ」

Answer
icon
「……またこの部屋?」

『二度あることは三度ある』という言葉を思い出しながら、なんとなくまた椅子に座る。

icon
「あれ、今度もまた違う人じゃん」

以前ここで会った機械式人形とも笛吹きの少年とは別の人物に目をぱちくりとしながら

icon
「僕はこの部屋に来ると三度目なんだけどお姉さんは初めてなんだね。
 って、僕がクロ・・かぁ……まあ色の面積で言ったら僕の方が黒いか

目の前の白い服の女性と自分を見比べながらぼそりと呟いて

icon
「生きる理由や人生の目的ねぇ……」

icon
「正直それも考えたこと無かったんだけど。将来の夢なんかもさ。
 この世に生まれたからとりあえず生きてるし、今が楽しければそれでいいやって感じ」

icon
「面白そうな世界に行って楽しそうな物事に参加して、自由に生きる。
 強いて言えばそれが目的と理由かなぁ」

元の世界に居続けていたら、自分もきっと目の前の女性のように悩むことになっていたかもしれない。
――否、既にその兆しが出ていたから未知なる存在からの得体のしれない力でも喜んで受け取って今こうなっているわけなのだが。
やはりこの部屋には自分の深層心理とかそういうものが反映されてるんだろうか、とぼんやり考えながら


icon
「……シロさんも何か面白いこと見つかるといいね」