Chapter05-fin

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

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あなたの言葉が空間に染み込むように静かに落ちていく。
吸血鬼はそれを逃さず掬い上げ、ゆるく微笑む。

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「ええ。とても“あなたらしい答え”だわ」

白い部屋の境界がふっと揺らぐ。
輪郭が削れ、床と壁の境目が淡く溶け合っていく。
まるで視界が曇るように、世界そのものが退いていく。

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「愛はね、いつだって“行き先”を自分で決められるものじゃないわ。
 でも──あなたがどこを望むかで、
 その結末に“どんな色をつけるか”は変わっていくわ」

彼女の輪郭もわずかにぼやけてみえてくる。
けれど、その赤い瞳だけは最後まで揺るがずあなたを見ていた。

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「……ええ。これで終わり。
 “今回のあなた”と話すのは、これが最後ね」

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「此処での話なんて忘れてしまっても構わないわ。
 でもいつかあなたの“愛の答え”が変わったとき、また聞かせて?」

部屋はほとんど形を失い、
あとに残るのは薄い光と、彼女の声だけ。

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「さあ、戻りなさい。
 あなたの現実へ──あなたの愛が続く場所へ」


世界が静かに途切れる。
まばたきの合間に、白が完全に消え──
あなたは夢のように白の水面からゆっくりと浮上していった。

ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「愛はね、いつだって行き先を自分で決められるものじゃないわ。
 でも──あなたがどこを望むかで、
 その結末に“どんな色をつけるか”は変わっていくわ」

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「……ええ。これで終わり。
 “今回のあなた”と話すのは、これが最後ね」

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「此処での話なんて忘れてしまっても構わないわ。
 でもいつかあなたの“愛の答え”が変わったとき、また聞かせて?」

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「さあ、戻りなさい。
 あなたの現実へ──あなたの愛が続く場所へ」

白い部屋の境界が、ふっと揺らぐ。
床と壁の境目が削れ、淡く溶け合っていく。
輪郭を失った世界は、いつも思考が深まる合図だった。

フェルヴァリオはその中心に立ち、静かに息を整える。
錬金術師として、物質を変える前には必ず定義を行う。
定義を誤れば、変成は失敗する。感情もまた、同じ法則に従った。

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「定義、愛とは──」

言葉に出さない。
言葉にした瞬間、答えが閉じてしまう気がした。

フェルヴァリオはフラスコを揺らし、液体の変化を見つめる。
愛は状態だ。
誰かを手に入れることでも、失わないことでもない。
相手を『別の存在として扱い続ける』ための緊張。
緩めれば溶け、締めすぎれば壊れる、極めて不安定な均衡。

愛には必ず不自由さが生まれる。
愛に伴う不自由さを否定する者は、最初から愛を信じていない。
問題は不自由をどこに配置するかだ。

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自分に置くのか。相手に押しつけるのか。

後者を選んだ瞬間、愛は錬金術ではなく、呪いになる。
かちゃりとフラスコに管を通し、側面のラインいっぱいにこぽこぽと桃色の液体を注ぐ。

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「愛のために、どこまで差し出せる?」

フェルヴァリオはすっと指先で金色の錬成陣を広げ、フラスコを置く。
その問いは、錬成陣に似ている。
初めは円は美しく閉じているが、中心に置かれているのは金属でも命でもなく、
相手の恐怖だ。

差し出さなければ失う。応えなければ壊れる。
選ばなければ、愛していないことになる。

錬成陣の中央に置かれたものは、生き物の心臓。
どくん、どくん、と脈打つその鼓動は贈り物のように見えても、
実際には感情の言葉で隠した脅しだった

フェルヴァリオは知っている。愛は測れない。
錬成陣の心臓に問いかけても、答えは返ってこない。
測ろうとした瞬間、人は量を増やすか、相手を減らすかしか選べなくなる。

本当に見るべきは、相手が自由でいられるかどうか。
拒否しても罰がなく、沈黙しても関係が続くかどうか。

選択の自由が残っている限り、愛はまだ錬成途中だ。
フェルヴァリオはこぼすように言った。

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「……海にでも行こうか」

透き通った青。白い砂浜。誰もいない。
波が揺れて、ちいさな波紋が足元に届く。
オレンジ色の背鰭せびれ、水面を滑る影。

行き先、という言葉が浮かぶ。
終点を決めた関係ほど、脆いものはない。
同じ場所に辿り着かなくてもいい。途中で降りてもいい。
それでも偽りではなかったと言える時間。

過ごせた時間が残るなら、錬成は失敗ではない。

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(うちの兄貴夫婦、いちゃいちゃしてんだろうな)

頭の片隅に浮かぶ。
肩がほぐれ、胸の奥がふわりと震える。

白い部屋が、さらに薄くなる。
世界が戻り始め、フェルヴァリオは最後にひとつだけ思考を残す。

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「愛とは──」

境界が消え、部屋は崩れる。定義は、まだ未完成のままだった。