Chapter03-03

記録者: 神辺野 令人 (ENo. 121)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

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「……そっか」

一言だけをぽつりと落とし、その後の言葉を探すように目が泳ぐ。
何かを言えば軽くなってしまうし、黙れば重くなる。
その中間を彷徨うような視線の動きだった。

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「いや、なんかあんま気の利いた事言えないや。
 テキトーな相槌を簡単に言うのは失礼っていうかさ……」

女は椅子にもたれかかり、髪を指で弄りながらぼやくように言葉を零す。
……指先で“間”を誤魔化しているようだった。

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「……じゃあ、さ、クロ。
 クロって誰かに期待されたりすることって、ある?」

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……誰かに期待されてるって思うの、疲れない?


──あなたは、“期待”に対してどのような感情を抱きますか?


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「ウチさ、親とか先生とか、あと周りの人とか……
 期待されるとさ、なんかこう……自分のペースで動けなくなる気がして」

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「でもさ、期待されるのって悪いことじゃないのも分かるんだよね。
 褒められたり、認められるのって、ちょっと嬉しいし……」

言葉はゆっくりと紡がれていくなか、指先だけが落ち着きなく動く。
笑っているような、笑っていないような声だった。

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「けど、期待ってさ、“応えられなかった時の怖さ”までセット販売なんだよね。
 おまけに“努力不足に見られちゃうリスク”付き」

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「嬉しいのに疲れる。
 ありがたいのになんか苦い。
 クロはそういうの、ない?」

Answer
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「期待、ですか。私は幸いにして、自身の働きに見合った分だけの期待を受けている、と感じていますので、特段疲れるということはないのですが……あなたは、そうではないというのですね」

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「失礼を承知で申し上げますが、あなたはご自身の価値を低く見積もりすぎなのではないでしょうか。
 この問答においても、あなたは慎重に、繊細に言葉を選び、それらが決して相手を傷つけることがないように……どこか遠慮をしているような気がしたもので」

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「あなたは『期待されるのは疲れる』と言いながらも、それが『ありがたい』ことであるとも認識できている。
 相手が自分に期待をする気持ちを、そうして思いやることのできるあなたには、すでに周囲からの期待の程度に負けないほどの実力が備わっているのではないでしょうか?
 また、そうした気遣いのできるあなたが、仮に“期待に応えられなかった”として、責める者などいるでしょうか」