吸血鬼アマリエは、赤い瞳を細めた。
どこか愉しむように、静かに頷く。

「私はね……愛って、とても厄介で、
でもどうしようもなく惹かれるものだと思うの。
血みたいに温かくて、時間みたいに残酷で、
それでいて、どんな者でも変えてしまう」
彼女は細い足を組み替え、椅子の背に体を預ける。
真っ白な部屋の中で、その赤い瞳だけが深い影を帯びていた。
軽く首を傾げて笑うと、その笑みはころころと転がるように形を変える。
無邪気にも見えて、どこか深い絶望すら含んでいるような、不思議な笑み。
やがて吸血鬼は小さく手を合わせ、軽い音を鳴らした。
その一拍で、空気がまた別の問いへと向きを変える。

「さ、次の問いに行きましょう?
あなたは──愛に伴う不自由さについて、どう思う?」

「縛られる側としてでも──縛る側としてでも、
どちらでもいいわ。少し考えてみて?」
問いは優しい。
けれど、逃げ道は用意されていない。

「ふ────ん」
気の抜けた声。
首を傾げる。

「……愛に、不自由さなんてあったんだ?」
縛る側と縛られる側……?……なんの話だ?」
少し考えてから、言葉を続ける。
フラスコを指で転がす仕草。

「火に例えるならさ
燃えてる間は、熱くて明るくて、便利だし綺麗だよ。
でも、火は燃え広がる場所を選ばない。
管理しなきゃ、世界ごと焼く」
ちらりとアマリエを見る。
肩をすくめる。

「それって、縛ってるのか?それとも、縛られてるのか?
オレから見ると、どっちも勝手に燃えてるだけだ。
不自由っていうより……
制御しない選択をした結果じゃない?」
椅子に背を預け、目を細めながら淡々と言った。

「縛るとか縛られるとか。そんな概念、火には無い。
燃えるか、燃えないか。それだけだろ?」
赤い瞳と、焰色の思考が、静かにぶつかる。
アマリエがどう返すかで、この部屋の温度は変わる。