Chapter05-01

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

クリックで開閉
あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

変わらぬ様子のその部屋の、ただひとつの椅子に腰を掛けると──
あなたの向かいには、まず鮮やかな赤色が揺らめくように浮かび上がる。

icon
「──あら。今日も来てくれたのね?」

icon
「それとも〝今日のあなた〟は初めてのあなた?
 一体此処の時間軸はどうなってるのかしら、本当に面白いわ」

くすくす、と透明な鈴のような笑い声。
少女の姿をしたそれは、あなたを値踏みするでもなく眺め、
こちらの反応を楽しむように言葉を紡ぐ。

icon
「あなたも分かっているでしょう?この部屋はいつでも
 同じところに戻る事ができる・・・・・・・・・・・・・のよ」

icon
「思索を重ねた後、また同じ質問に答えたいとき、
 そうあなたが望むなら、あなたはまた同じトイカケを受ける事が出来る」

icon
「──考えは日々変わるものよ。
 常に同じ答えを出し続ける生き物なんてきっと存在しないわ。
 今を語る、今を自覚する、そのためにこの部屋を使えばいいのではなくって?」

歌うように紡がれた言葉は、どこか甘く、どこか寂しい。
まるで無窮の眠りの中で、何度も同じ思索を拾い直してきた者の声音のようだった。

icon
「私はアマリエ。とある世界の吸血鬼よ。
 ずぅっと昔に封印されてるから、きっと誰も私を知らないわ」

さらりと自己紹介を流し、あなたの名前を問う事はしない。
いつかに知ったのかも知れないし、この部屋の性質を知っているが故
わざわざ訊く必要も無いとしているのやもしれない。

そうして吸血鬼は、何も迷う事も無くトイカケを紡ぎ出す。

icon
「私はずっと同じ事を問い続けている。
 一意に定まる答えが無いと知っているけれども、
 それでも追及する事に無駄は無いと思っている。

 あなたにとって答える価値が無いなら目を閉じてご覧なさい?
 きっと元のところに戻れるわ」

ふと、吸血鬼の紅い瞳があなたを真っ直ぐに射抜く。
その奥には、何百回も、何千回も、この思索を繰り返してきた気配が宿っている。

icon
「ねえ、あなたにとって──愛ってどんなもの?


──あなたにとって愛とは何ですか?
Answer
 気づけば、またもや白い部屋だった。

 変わらない無機質な白。
 中央には、ぽつんと椅子がひとつ。

 フェルヴァリオは溜息まじりに腰を下ろす。
 その瞬間、視界に鮮やかな赤が差し込んだ。
 白の中で、あまりにも強すぎる色。

icon
「──あら。今日も来てくれたのね?」

icon
「それとも今日のあなたは初めてのあなた?
 一体此処の時間軸はどうなってるのかしら、本当に面白いわ」

 柔らかく、どこか愉しそうな声。
 くすくす、と。
 鈴を転がしたような笑い声が、空気を揺らす。
 そこにいたのは、白い空間を切り裂くような存在感を持つ女。

 赤い瞳。艶やかな唇。
 わずかに覗く、吸血鬼の牙。

icon
「私はアマリエ。とある世界の吸血鬼よ。
 ずぅっと昔に封印されてるから、きっと誰も私を知らないわ」

 軽く首を傾げて、自己紹介。
 フェルヴァリオの名前を問う事はしない。
 いつかに知ったのかも知れないし、この部屋の性質を知っているが故
 わざわざ訊く必要も無いとしているのやもしれない。

icon
「私はずっと同じ事を問い続けている。
 一意に定まる答えが無いと知っているけれども、
 それでも追及する事に無駄は無いと思っている。
 あなたにとって答える価値が無いなら目を閉じてご覧なさい?
 きっと元のところに戻れるわ」

 試すようでもあり、甘く絡め取るようでもある視線。
 ふと、吸血鬼の紅い瞳があなたを真っ直ぐに射抜く。
 その奥には、何百回も、何千回も、この思索を繰り返してきた気配が宿っている。

icon
「ねえ、あなたにとって──愛ってどんなもの?」


icon
「……ふーん」

 フェルヴァリオは、間の抜けた声を出した。
 吸血鬼か、と。
 まず頭をよぎったのは感情ではなく、素材としての価値。

icon
(牙……血……再生能力……あって保存方法次第で、かなり……)

 そこまで考えて、ぶん、と頭を振る。
 軽く咳払い。

icon
「……違う違う。
 愛……?……もの……? うーん……」

 眉を寄せ、少し天井を見上げる。
 考えるように、指 先で自分の膝を叩く。

icon
「もし、愛に形があるとするなら…………燃え盛る火、かな。
 燃料の芯が燃えてる限りさ 木材って、燃えるでしょ。」

 言葉を探すように、ゆっくり。
 淡々と、錬金術師らしい例え。
 アマリエの赤い瞳を、ちらりと見る。

 少し肩をすくめる。

icon
「薪があって、酸素があって、火種があれば。条件が揃う限り火は続く。
 ……逆に言えば、
 どれか一つ欠けたらあっさり消えるものでもあるけどね」

白い部屋の中、赤と白が静かに向き合っていた。
愛を糧に生きる者と、価値と対価を量る竜と。
次の問いが来るのは、きっと、すぐだ。