
「……そっか」
一言だけをぽつりと落とし、その後の言葉を探すように目が泳ぐ。
何かを言えば軽くなってしまうし、黙れば重くなる。
その中間を彷徨うような視線の動きだった。

「いや、なんかあんま気の利いた事言えないや。
テキトーな相槌を簡単に言うのは失礼っていうかさ……」
女は椅子にもたれかかり、髪を指で弄りながらぼやくように言葉を零す。
……指先で“間”を誤魔化しているようだった。

「……じゃあ、さ、クロ。
クロって誰かに期待されたりすることって、ある?」

「……誰かに期待されてるって思うの、疲れない?」
──あなたは、“期待”に対してどのような感情を抱きますか?
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「ウチさ、親とか先生とか、あと周りの人とか……
期待されるとさ、なんかこう……自分のペースで動けなくなる気がして」

「でもさ、期待されるのって悪いことじゃないのも分かるんだよね。
褒められたり、認められるのって、ちょっと嬉しいし……」
言葉はゆっくりと紡がれていくなか、指先だけが落ち着きなく動く。
笑っているような、笑っていないような声だった。

「けど、期待ってさ、“応えられなかった時の怖さ”までセット販売なんだよね。
おまけに“努力不足に見られちゃうリスク”付き」

「嬉しいのに疲れる。
ありがたいのになんか苦い。
クロはそういうの、ない?」