Chapter02-03

記録者: 神辺野 令人 (ENo. 121)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

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奇抜な色の羽織をひらりひら。
あなたの言葉を頷きながら聴いて、なるほど!なんて相槌を入れた。
少年にとってあなたの言葉は新鮮な音列なのだろう。
ありがとう!なんて言葉は程々に。また次のトイカケがあなたに振られた。

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「ねえねえ、君に訊きたいんだ。
 僕ってさ──いつも思うんだ。“正しいこと”って何なんだろうって?」

少年は笛を軽く指先でくるくる回し、空気に音の波を描くようにして言う。

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「だってさ、僕が吹く笛が誰かを笑顔にしたとき、
 それは“正しいこと”な感じがするでしょ?
 でも、もし誰かが嫌な気持ちになったら……それは“間違い”になるのかな?」


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「ね、君は──“正しい”ってなんだと思う?


──あなたは、何をもって“正しい”と判断しますか?

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「僕はさ、間違いなんてないと思うんだ。
 高い音も低い音も、速いテンポも遅いテンポも、全部必要で、
 楽しさも悲しさもぜーんぶ、大事なものなんだ!
 だから全部正しいって言えるんじゃないかなって」

見えない舞台の上で踊るように広げた両手。
世界のあらゆる感情を抱きしめるかのように、無邪気で貪欲だ。

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「たとえ誰かが“間違い”って言っても、
 そのせいで誰かが笑ったり泣いたり、変わるなら、
 それは正しいことになるんだ!」

少しだけ、笛の端がきらりと光った気がした。
正しさは、正解ではなく──変化そのものなのだと、少年は信じている。

少年は笛を胸に抱き、満足げに微笑んだ。

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「僕は“自分が正しい”と信じてる。だから誰かに間違ってると言われても気にならない!

 君はどう?周りの音は気にしちゃうタイプかな?
 それとも、君も自分の旋律を持っているのかな?
 ──君にとって“正しい”て何?」

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「なるほど。あなたが他者に働きかけた際、それを受けた者に何らかの感情などの動き、あるいは変化が表れれば、その行為は“正しい”と仰るのですね。
 では、私がいまあなたを叩き、あなたが悲しいと思ったとしたら、それも“正しい”ことですね。そうでしょう?」

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「──失礼、意地悪なことを言いましたね。
 “正しさ”というものは複雑で、どんなに言葉を尽くしたとしても、一意的に定義することはできないものだと、私は考えています」

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「私にとって“正しい”とは、無色透明で、特定の形状を持たない──つまり何の物差しにもならない、まったく頼りにならない概念です。
 人々がそれに対し、各々好き勝手に、極めて主観的な形を想像創造しているというだけです」

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「あなたの“正しさ”が、他者を傷つける刃のかたちをしていないといいのですが」

 自らの“正しさ”が世間に受け入れられないことを認められなかったアレは、外に出るのをやめた。