Chapter01-Fin

記録者: リコフォス (ENo. 152)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

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「……回答を確認しました」


観察者は淡々と処理を続けているように見えるが、
どこかそれは“耳を傾けている”仕草にも似ていた。

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「当機の観測は、これにて終了します。
 記録は保存され、分析は後続機へ引き継がれます」


レンズがわずかに光を収束させ、あなたを見据える。
無機質なガラスに感情は映らない、
ただそれは淡々と観測を続ける機械でしかない。ずっと。

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「あなたが何者であるか──その定義は、あなた自身が決めるものです。
 当機はただ、それを観測したという事実のみを残します」


──そうして白い部屋がじんわりと、輪郭を失っていく。
まるで夢から醒めるように。


──そう。きっとこれは夢だった。


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「……観察対象。これにて接続を断ちます」



ガラス玉のような声が、虚空の中で響いていた。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer

「……?」

ちょっとした違和感。
それまで少女は……

寝具で寝ていたのかもしれない
裏庭で剣を振っていたかもしれない
砂漠を模した地で長柄斧を振り回していたのかもしれない
真っ黒な瞑想空間に浮いていたかもしれない
武器や防具を広げて磨いていたのかもしれない
もしくは、小さな台所で何かを作っていたのかもしれない。

ただ、少しだけ首をかしげて、一日を始めるのかもしれないし
それまでの行為に戻っていくのだろう。

---
生まれつきの冒険者なんかいない一日。たったの一晩で、少女は全て……いや、姉以外を失った。
もっと正確に記すなら生きのびた友人もいた。
だけどそれよりもっと多くのものと、場所と、ひとを失った。
その村はもう地図には載っていない。誰も住んでいないから。
盗賊団に目をつけられて、奪い終わった場所には火を放たれて
それでも生き残った子たちがいたのは、大人たちが"もしも"のきまりを作っていたから。
素直に差し出したところで生かされるかわからない。
持っていかれたあと、生きていけるだろうか。
最終的に皆が頷いたのは、子供たちだけでも逃がすこと
近隣の村の大人に、そこからの通報で領主が送った兵に
保護されて、生きてほしいと。"すべて"は奪わせないと。
ささやかで切実な願いと一矢を用意して、その矢を正しく放ったその通りにみなが動いた
子どもたちは全員が一か所に、というのは無理な話だったが
受け入れる余裕がある孤児院に、それぞれ引き取られて
その先で養子に迎えられた子もいたかもしれない。

だけどその姉妹は違った。
遺伝子的魔力構造の全欠陥。
作る器官も溜める器官も回路もないなら、
魔力を込めるだけで使えるタイプの魔道具さえ使えない。
これ以上なく不便だが、選べばつかえる魔道具もある、その程度。
そしてその体質は、感情が高ぶっても、どこを歩いても、魔力痕を残さない。
――足のつかない斥候として、これ以上に向いているものはなかった。

どこからか"全損"の"姉妹"がいると聞きつけた『機関』が、彼女たちを引き取った。
引き取った先で、栄養の管理された食事と疲れが取れる寝床、動きやすい清潔な衣服を与えられた。
そして、ありとあらゆる・・・・・・・ことを教え込まれた。
人体の仕組みを座学で、実技を体を鍛えることで。
言語、話法、作法、芸術……教養から、国の仕組み、人々の役割。
その中に歪みが生まれそうな不正がみうけられたとき、どう正せば表面化する前に抑えられるか。
教え込まれた。叩き込まれた。
確実に成せるように、ブレが出ないように、失敗しないように
私情の抑え方を、……否、その施設に入った者たちは、そういったものを削ぎ殺された。
そうして生まれた余白に、市井で生きるための振る舞いを詰め込まれた。
"無事"に仕上がれば、表社会での肩書と名前を与えられ、世に放たれた。
姉妹に与えられた肩書は請負冒険者。
ギルドに認可された依頼をこなして生き、"指令"が届けば冒険者姉妹は影に溶けた。

――二度と、自分たちみたいな目に遭う人が出ないように。

腐った芽を摘み、伸ばすべき苗を欲のために刈ろうとする手から守り
土壌の様子を調べ、報告と間違いがないか。虚偽の届けを出した者の実態を探って。
二人きりでも誰に聞かれているかわからないと、
自分たちを"作った"場所のことを口にすることなく。淡々と、坦々と。
でなければ、公に困っている人を助けに冒険者として飛び回り、
姉妹は生きてきた。そうして生きていくと思っていた。
妹だけがいくつもの要素が重なった事故で世界を渡るまで。
二人の世界は、二人の当たり前は、再度 壊された