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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」
シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

「あなたの価値観を測ります。
──あなたにとって譲れないものは何ですか?
自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

「その理由も含めて説明してください。
対象や状況が変わった時、
あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」
──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?
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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」

「当機は観測を第一義として設計されています、
どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。
これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」

「思考の前提、当然と感じている事、
それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」

「回答は単一である必要はありません。
譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
必要に応じて検討を続けてください」
Answer
トイカケ01-04 価値観、譲れないもの
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「あら、先回りしちゃったのね」
状況に応じて変わる解答
その理由――優先するものについての説明も添えて
既に少女は語ってしまった。
恐らく彼?からの問いはあらかじめ組み込まれているのだろう。
記録されているのだから、と
もう一度答えることも、融通が利かないと拗ねることもなく
"そういうもの"として受け入れる態度。
「それなら"譲れないもの"について、ね」
二、三度瞬きをして、僅かに顔ごと視線を斜め下にやり、
レンズに向きなおった顔は無表情に近かった。
ただ、深い橙、明るい茶、琥珀色の瞳には今までで一番はっきりした意志が浮かんでいる。
「どちらの世界でも変わらないわ」
「平穏」
「……私個人が何を大事にするかなんてどうでもいいわ」
「みんなが今日も明日も、明後日も」
「その環境が失われることなんか考えずに暮らせる世界」
「そうなるように、それを維持するために、私は動く」
「どこでも、どんな場所でも」
「どんなことでも」
「それが私の全て」
「……だった」
「今はそれ以外もあるけれど……
平穏が脅かされることがあれば、排するために動くでしょうね」
「"それ以外"も、そこが盤石だからこそ持てるものだから」
「私が認識している場所で、失う人はもう増やさない」
「私たちまでで、十分」
それもまた、追及を許さない態度で、言い切るのだった。