
優希(クロ)
「満足か…。………………ないよ。何せ、研究の世界は毎日が更新だ。一度で満足してちゃ、研究員なんか名乗れないさ。」
追求に追求を重ねて、どれだけ先までその答えがあるのか、それを探求し続けるのが研究者。
満足なんてしてはいけない、と、言われ続けた私は、満足なんて言葉を知らない。
壊れた機械のように、自分が朽ち果てて止まるまで、追求できるものは追求し続ける。
そんなつもりだった。

優希(クロ)
「私たちはね、満足しちゃいけないんだ。これでいいやなんて妥協しちゃいけないんだ。研究員だからね。………だから、私の辞書に満足なんて言葉はないよ。」
思考の中にあった言葉を、そのまま口から出す。
そう、これでいいなんて、言っちゃいけないのだ。突き詰めるところまで突き詰めなければ、それは研究員ではなくただの暇人だろう。
…あなたは厳しいと思うかもしれない。だが、お忘れじゃなかろうか。
研究所にはその突き詰めが楽しいと、生き甲斐だと思う変態しか、入ることを許されないのだ。

優希(クロ)
「さっきから思ってたんだけど。私たち、本当に真逆の経験…というか、真逆の感性をしてるよね。…キミはいい研究材料になりそう。」
満足は、ゴールでは無いと、あなたは言った。けれど、研究の世界では、その満足が、ゴールになり得てしまう。だから全て排除しないといけない。
教授が、博士が満足してしまったら、その先の解明されていない謎は、そのままになってしまう。
いやまあ…いずれ誰かが引き継いで究明していくものなのだろうが…それではやはりつまらないし、いつまでかかるかすらわからない。
この研究が解明したら次は何が待っているのか、それを繰り返し続けて、最後までやり続けるのが私たち研究者なのだから、満足はこの世界には無いのだ。だって、研究対象は無限にあるから。

優希(クロ)
「ただ…本当に、君たちの生きる世界と私たちの生きる世界は、全く違うからね。…頼むから真に受けないでくれよ?」
ただ…言うなれば、研究しているものが解明されれば、とても喜ばしいし、それに関しては満足してもいいのだろう。けれども…やはり満足してしまうと、怠惰が生まれてしまう。やはり…私たちは満足感を感じるべきでは無いな。
止まらない思考を整理しつつ、落ち着いた心で、私はあなたの返事を待っていた。