
優希(クロ)
「………いや、いいんだ。むしろ…気の利いたことを言われる方が辛いから。」
そう。そうやって、腫れ物扱いをされてきている私にとっては、むしろ気の利く言葉の方が傷つくのだ。
そうして、お互い、少しの間の後。

優希(クロ)
「………悪いんだけど、私はキミには適材な人間じゃないらしい。………そんなやつの意見でいいなら………聞かせよう。」
私は、本当にあなたとは真逆の人生を歩んできているらしい。まあ、そんな逆向きの意見でいいのであれば、いくらでも聴かせてあげられる。
ひとまず、深呼吸して。そうして、あなたの動向を眺めるようにしながら話し始める。

優希(クロ)
「私はね、毎日期待されながら生きてきた。……それはわたしにとって当たり前だったんだ。だから、なんとも思わなかったさ。毎回、期待通りに動けばいいだけ。好きなようにしてもほめられる。………イージーモードだったよ。だって、何しても期待以上だって褒められるんだもの。」
博士の娘だから、頭のいい子なんだ。
毎日、そんな言葉と期待を聞かされて育ってきた私は、どうやら本当に普通の脳みそをしていなかったらしい。
なんでも理解ができて、どんなことでもスッとわかる。
いろんな勉強をしても、一瞬で全て解き切ってしまって。
期待に応えて…いや、正直、みんなの期待以上の結果を出し続けたきたと思う。
だから、私の毎日は輝かしかった。楽しかった。やればやるほど、みんながたくさん褒めてくれて。何をしても、みんなから返ってくる言葉は、"想像以上の出来だよ!""すごいわ!"ばかりで。
何より嬉しかったのは、お父さんや、お母さんからの褒め言葉だった。
本当に、かけてもらえることが嬉しくて仕方がなくて、毎日、いろんなことをし続けた。
途中、母を亡くした。よそ見運転の車に撥ねられて。
即死だったらしい。
けれども、私はそこではめげなかった。私にはまだ、お父さんがいたから、立ち上がった。
そうして、毎日、ずっとやり続けた。勉強、研究、追求…一つのものに執着しないで、本当にたくさんのことをした。
けれども今度は、父と、他の大切な仲間たちをも、研究中の事故で亡くしてしまった。
…今はどうだろう。立ち上がるための手を取ってくれる人は、もういない。
私は、そうして今は過去に執着して、2度と立ち上がれなくなってしまった。

優希(クロ)
「…まあ……長くは続かなかったがね。見ての通り。………この歳で全部失ったよ。」
言葉は軽く。けれども、重々しい雰囲気を纏っていた。