Chapter02-Fin

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

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「そっかぁ……そういう音を持ってるんだ、君って」

足をぶらぶら揺らし、胸元の笛が軽く揺れる。
その小さな揺れは、まだ奏でられていない何かを予感させる。

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「ね、楽しかったよ。君の音、ぜんぶ新鮮だった。
 僕の知らないリズムで、知らない色で響いてて……」

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「──君の曲、きっとまだ続くよ。
 途中で休んだり、音を外したり、急に転調したりしてもさ。
 それでも“君だけの曲”になるんだ」

ゆるりともたげた手を、ひとさし指を
あなたに向けてはくすりと笑う。

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「だからね、止まらないで。
 君が止まったら、その続きの音、誰も聴けなくなっちゃうからさ」


そうして少年は揺らしていた足を床に着いて、
ひょっと立ち上がった──ように見えた。


──向かいの椅子には誰もいない。
目に鮮やかな少年の色彩は、もうどこにも認める事は出来なかった。

……あなたも意識して目を閉じれば、あるべきところに戻れるだろう。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
 王は無言で少年を見つめる。
 己の導いたその答えは、
 お前を彩る音のひとつになれたのか?

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「……止まる訳がない。止まれるものか。
 私の革命は、私にしか成せない」

 されど、己を蝕むこの力についての自覚もある。
 革命の全てを成す前に音が途絶えるのであれば、
 せめて次へと繋げるようにと動くつもりだ。

 革命の灯火は、決して消さない。

 そのようなことを思考しているうちに、
 目の前にいたはずの少年は消えていた。

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「……………」

 瞑目。

  ◇

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「…………か」

 声がする。

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「…………へいか」

 目を開けた。

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「陛下〜???」

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「…………アルカか。おはよう」

 シャルティオは、己のもうひとりの側近に目を遣る。
 場所はいつもの執務室だ。

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「アタシたちの王サマってばよ、
 最近、かなりお疲れじゃねーの?
 ちゃんと休まなきゃ
 強制的に寝かせんぜ〜?」

 この側近は、薬師だ。
 その気になれば、眠り薬の調合なんて。

 しかし、シャルティオの体質は。

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「……私に薬の類いが効かないことは、
 お前もよく理解していると思うが」

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「知ってる。
 でもあまりにもひでー時にゃ、
 殴ってでもオネンネしてもらうからな」

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「…………心しておくよ」

 でも、うたたねぐらいならば
 許して欲しいな、と思うシャルティオだった。

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「……妙な夢を見た」
「ところでアルカ、あのさ」

 王には、この側近に問いたいことがある。

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「お前は──
 正義って、何だと思う?

 出されたトイカケ、導いた答え。
 同じ問いを投げた時、
 この側近はどう返すのか気になったのだ。

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「………………」
「……妙なこと訊くじゃねーかよ」

 問われて、アルカが難しい顔をした。
 そうだな、と口を開く。

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「…………法に従うことこそが正義、
 “正しいこと”なんじゃねーの?
 アタシたちは魔導王国の民なんだしさ」

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「法を破れば悪だ。分かりやすいだろ」
「その法が腐っているから、
 王サマは変えようとして下さっている。
 ありがてーことだよなー」

 言ってから、薬師は目を伏せる。

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「…………まぁアタシはその生き方からして、
 どう言い訳しても悪になるけどな」
「アタシのしたことが“世間的に見て”
 どう映るかは理解してるぜ」

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「そんな“悪人”でもこうやって
 側に置いて下さる王サマに感謝って、な!」
「ハッハァ!」

 満足したかい、と薬師が笑う。
 あぁ、と王は頷いた。

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「……お前にとっての“正義”は法だ。
 だがお前は己が悪の自覚がある」

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「……お前からして、
 “正義”はあまり重要ではない?」

 そうだな、と薬師が肩を竦める。

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「一般的な枠から外れた存在が、
 それでも正しく在ろうだなんて
 おこがましいだろうがよ」

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「アタシたち“イデュールの民”は逸れモンだ、
 差別されるような存在だ」
「だから、“まとも”では居られない」

 それでも、と赤い瞳が、
 確かな想いを込めて王の青玉石を見つめた。

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「アンタのせいぎになら従っても良いぜ」
「アタシは革命に期待してる」

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「アンタという王サマは、
 こんな逸れモンのイデュールでも、
 忌避せずに重用してくれたんだから、よ!」

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「………………」

 その紅を見つめ返した。
 イデュールの民の特徴である、真紅の目。

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「…………お前の期待に添えられるよう、
 頑張るよ」

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「頼むぜ?
 逸れモンたちの星、
 アタシたちの“革命王”!」

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「────あぁ」


 トイカケを経て、側近に新たにトイカケを投げて。
 心の中、無限に繰り返す自問自答。
 自分に関しては自信がない。
 でもアルカのように、強く期待を掛けてくれる人がいるならば。

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(止まれない、止まれない。
 止まる訳には、途絶えさせる訳には)

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「でもとりあえず今は休め」

 見透かすように言われて、
 はい…………と従う王なのだった。