Chapter02-05

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

クリックで開閉
icon
「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

icon
「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

icon
「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


sample
icon
「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

icon
「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

icon
〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
icon
ひとみん
「…いや…そうだな…。悪いは…まあさっき言ったような感じ。
正しいの裏面にくっついて回ってくるのが、悪さ…だと思うんだ。誰かから見たら正しいけど…誰かから見たら悪、見たいに、立ち位置で変わっちゃうものだと思うんだよね。」

そういえば…2人に私のことカミングアウトした時のことを思い出した。
けれど…2人は態度すら変えなかったし、動揺もしなかった。
まるで、昔からそうだったみたいに、それからもずっと前とずっと同じように接してくれて。

別にそんなの関係ないよ、だって優しいじゃん!なんて嬉しそうにいちごを頬張る彼の姿と、
別にそこらへんどうでもいい!だっていろいろしてくれてんだから!なんて豪快に笑ってる彼の姿が思い浮かんだ。

……そういえばさ。…お前はさ、お前の正しさを貫いた結果がこれなんだよな。…でもさ。…せめて…


別れの挨拶ぐらいは、させてくれても…良かったんじゃない?


icon
ひとみん
「キミは自分が正しい、って信じられてるみたいだけど…大人たちは、キミの悪いところ…つまり裏面しか見ていないんだと思うんだよね。表面を見たら多分…意見も変わるんじゃないかな。」

悲しさに蓋をするように、思考がどんどん巡ってくる。どんな人でも、悪いところは存在する。どれだけ聖人でも、やっぱり良くないところは人間として生きている以上、どうしても生まれてしまうものだと思う。

それに重ねて人間は、悪いところにばかり目が行ってしまう生き物だと、過去に誰かが言っていた。
だから、いいことにばかり目を向ける癖をつけるといいと。

まあ、それが本当にいい事かどうかはわからないけれど…まあ、悪い方向に行くことはあんまりないんじゃないかと思う。

icon
ひとみん
「まあ…あたしは君の音を聞いたことないからよくわかんないんだけどさ。」

曲だのなんだのの知識なんかは、私にはない。そこまで嗜んできたわけじゃないから、いろんなセンスなんかもない。ただ、私がそうだと思うことを彼に伝えた。

icon
ひとみん
「…まあ、キミはキミのままでいいと思うよ。私は…そっちの悪がどうとかはわからない。こっちは偉い人に決められた悪がある程度あるけれど…そっちはそうじゃなさそうだし。私の世界の観点で行けば…私が悪い人だね。」

人が発するお前は悪だと言う言葉。それを見て見ぬふりして突き進める人だったり。
目の前の少年のように、己の正しさを信じて貫ける人だったり。
そもそも聞こえていない人だったり。
あとは…友人たちが己の信じる正しさへついてきてくれるような人が、世間一般では強いって言われている。

彼はそこんとこ、やっぱり強かったな。
…もう1人の彼は、弱かったっけ。

私は…耳を塞げなかったから、逃げてきた。
けれど、正しさを小さな行動で肯定してくれる友人が、悪という言葉が聞こえないようにしてくれた友人が…私には、いたんだ。
だから、私は強くあれたんだ。どんなことでもできたんだ。

今は……とにかく、踏ん張らないと。たくさん頑張らないとな。
image