
ひとみん
「…いや…そうだな…。悪いは…まあさっき言ったような感じ。
正しいの裏面にくっついて回ってくるのが、悪さ…だと思うんだ。誰かから見たら正しいけど…誰かから見たら悪、見たいに、立ち位置で変わっちゃうものだと思うんだよね。」
そういえば…2人に私のことカミングアウトした時のことを思い出した。
けれど…2人は態度すら変えなかったし、動揺もしなかった。
まるで、昔からそうだったみたいに、それからもずっと前とずっと同じように接してくれて。
別にそんなの関係ないよ、だって優しいじゃん!なんて嬉しそうにいちごを頬張る彼の姿と、
別にそこらへんどうでもいい!だっていろいろしてくれてんだから!なんて豪快に笑ってる彼の姿が思い浮かんだ。
……そういえばさ。…お前はさ、お前の正しさを貫いた結果がこれなんだよな。…でもさ。…せめて…
別れの挨拶ぐらいは、させてくれても…良かったんじゃない?

ひとみん
「キミは自分が正しい、って信じられてるみたいだけど…大人たちは、キミの悪いところ…つまり裏面しか見ていないんだと思うんだよね。表面を見たら多分…意見も変わるんじゃないかな。」
悲しさに蓋をするように、思考がどんどん巡ってくる。どんな人でも、悪いところは存在する。どれだけ聖人でも、やっぱり良くないところは人間として生きている以上、どうしても生まれてしまうものだと思う。
それに重ねて人間は、悪いところにばかり目が行ってしまう生き物だと、過去に誰かが言っていた。
だから、いいことにばかり目を向ける癖をつけるといいと。
まあ、それが本当にいい事かどうかはわからないけれど…まあ、悪い方向に行くことはあんまりないんじゃないかと思う。

ひとみん
「まあ…あたしは君の音を聞いたことないからよくわかんないんだけどさ。」
曲だのなんだのの知識なんかは、私にはない。そこまで嗜んできたわけじゃないから、いろんなセンスなんかもない。ただ、私がそうだと思うことを彼に伝えた。

ひとみん
「…まあ、キミはキミのままでいいと思うよ。私は…そっちの悪がどうとかはわからない。こっちは偉い人に決められた悪がある程度あるけれど…そっちはそうじゃなさそうだし。私の世界の観点で行けば…私が悪い人だね。」
人が発するお前は悪だと言う言葉。それを見て見ぬふりして突き進める人だったり。
目の前の少年のように、己の正しさを信じて貫ける人だったり。
そもそも聞こえていない人だったり。
あとは…友人たちが己の信じる正しさへついてきてくれるような人が、世間一般では強いって言われている。
彼はそこんとこ、やっぱり強かったな。
…もう1人の彼は、弱かったっけ。
私は…耳を塞げなかったから、逃げてきた。
けれど、正しさを小さな行動で肯定してくれる友人が、悪という言葉が聞こえないようにしてくれた友人が…私には、いたんだ。
だから、私は強くあれたんだ。どんなことでもできたんだ。
今は……とにかく、踏ん張らないと。たくさん頑張らないとな。