
ひとみん
「………………」
なんだか、彼の自由な様子を見て、また悲しくなる。
心の穴が広がるような感覚に、見ないふりをしながら私は続ける。

ひとみん
「えーっと?自分自身を信用できてるか…って、信用できなきゃまず生きていけなくないか?」
一旦、自分語りなのだけれど…私は、あの事件があってから表立って行動できなくなった。
そうして、裏側で隠れてコソコソ仕事をしなければならなくなったのだけれど…。
もちろん、裏の世界は安全じゃない。普通に道端で人が死んでいる。油断してたら後ろから襲われる。そんな世界だったから、誰も迂闊に信用できない。だから…私はずっと自分の勘だけを信じて生きてきたと思う。
もちろん、そんな物騒なところだったから、たくさん怪我もしたし…何回も死にかけた。
けれど、今私はこうやって5体満足で生きていられてるのだから、それが悪い結果をもたらしたわけではないと言うことはわかるだろう。
多分、自分のことを信じられていないと、咄嗟の判断もできない。
そうすれば今頃、殺されでもして、私は生きていないと思う。

ひとみん
「…あんたはなんか…気楽そうだな。導き手、っていう自分の役割があって。…そうやって自信を持てて…。」
正直、彼も苦労してきているのは、言動なんかですぐにわかった。
けれども…つい、自由さを気楽そうと言い換えてしまって。
そんなことは全くないと思いつつ…つい口走ってしまった。
どんな役割でも、必ず辛いことは一つや二つあるものだ。彼だってそうだった。気楽そうに見えていたが、たくさん苦労してきた上での、彼に最初からある自由さだったんだ。
大人としてこの発言は無責任だな。もしかすると傷つけたかもしれないな、なんて、自分自身に呆れながら、話を続ける。

ひとみん
「…ま、もちろん、悪いことじゃねえけどな。そりゃあ、自信を持てる方が断然良いさ。」
一つずつ話しながら、私の心はどんどん悲しさを増して訴えてくる。
彼が心配だ、もう彼は戻ってこない。彼は今どうしてる?彼はあれで幸せだったのか。
…脳内がうるさくなって、一旦目前の彼に目を向けて、思考を止める努力をする。
多分私は、目前にいる彼の自由さに、…どうしてもあの2人を重ねて見てしまっているのだろう。
全く違う性格、話し方、態度なのに…どうしてもそこだけなのに、重なってしまう。
人間っていうのは、どうしてこうも…自分の都合のいいように解釈してしまうのだろうか。
本当にため息がでる。

ひとみん
「…とりあえず、私は自分のことは…信じられていると思う。だって多分、そうでなきゃ今頃どっかで犬死にしているだろうからね。」
どうしても止まらない思考、まとまらない話に、私は一旦無理やり終わりをつけて。
私は急いで匙を投げるようにして、彼の次の話を待った。