少年の言葉は軽やかで、明るかった。
本当にただ、笛の続きを楽しみにしているだけのような──
そんな無垢な声音で。
──君が止まったら、その続きの音、誰も聴けなくなっちゃうからさ
その瞬間、胸の奥がひゅっと縮んだ。
やめて、と思った。
声にはしないまま、心だけが強く拒否した。
僕はずっと、止まらないようにしてきた。
止まったら、誰かが死ぬと思っていた。
だから走り続けて、選び続けて、背負い続けて──
そして最後には、“もう続けられない”僕自身が壊れた。
後を追おうとして倒れて、
その“続き”を断ち切ったのは、他でもない僕だったのに。
なのに。
「続きの音が聴けなくなる」なんて言葉を向けられたら、
僕は……どうしたらいいんだ。
続けられなかった僕は、
じゃあ……“間違い”だったのか?
少年の無邪気な笑顔の奥で、胸の深いところがじくじくと疼いた。
痛いって言いたかった。
でも、言えなかった。
言ったら、きっと悲しませてしまうから。
だからただ、

「……うん」
と笑うふりをして、誤魔化すしかなかった。
────瞬きの間に、少年の姿がすっと消えた。
次の瞬間にはもう、白い空間の静けさだけが僕を包んでいた。
どうして、僕はこんな場所にいるんだろう。
去っていった2人は、現実世界に帰れたのだろうか?
僕はなんで、まだここにいるんだろう。
考えても、答えは出なかった。
幾一のところにも、■■■■のところにも、僕は行けなかった。
迷っているから?
どちらを選ぶべきかわからないから?
違う。
“3人が揃っていたあの場所”以外に、
心の底から行きたいと思えるところなんて、本当はなかった。
でも、それはもう二度と叶わない願いであることも、知っていた。
ならば──どちらを選んでも、きっと同じなんじゃないか。
空虚な考えだけが、ゆっくりと沈んでいく。
気づけば僕は、座っていた椅子に足をかけていた。
その上に立ち、頭上の何もない空間を見上げる。
「……ここにロープがあればいいのに」
ぽつり。
独り言のようなその声は、驚くほど軽かった。
そして僕は、
自分を支えている椅子を──静かに、蹴った。