Chapter02-Fin

記録者: 古閑 茶太郎 (ENo. 1)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

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「そっかぁ……そういう音を持ってるんだ、君って」

足をぶらぶら揺らし、胸元の笛が軽く揺れる。
その小さな揺れは、まだ奏でられていない何かを予感させる。

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「ね、楽しかったよ。君の音、ぜんぶ新鮮だった。
 僕の知らないリズムで、知らない色で響いてて……」

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「──君の曲、きっとまだ続くよ。
 途中で休んだり、音を外したり、急に転調したりしてもさ。
 それでも“君だけの曲”になるんだ」

ゆるりともたげた手を、ひとさし指を
あなたに向けてはくすりと笑う。

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「だからね、止まらないで。
 君が止まったら、その続きの音、誰も聴けなくなっちゃうからさ」


そうして少年は揺らしていた足を床に着いて、
ひょっと立ち上がった──ように見えた。


──向かいの椅子には誰もいない。
目に鮮やかな少年の色彩は、もうどこにも認める事は出来なかった。

……あなたも意識して目を閉じれば、あるべきところに戻れるだろう。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
少年の言葉は軽やかで、明るかった。
本当にただ、笛の続きを楽しみにしているだけのような──
そんな無垢な声音で。

──君が止まったら、その続きの音、誰も聴けなくなっちゃうからさ

その瞬間、胸の奥がひゅっと縮んだ。

やめて、と思った。
声にはしないまま、心だけが強く拒否した。

僕はずっと、止まらないようにしてきた。
止まったら、誰かが死ぬと思っていた。
だから走り続けて、選び続けて、背負い続けて──
そして最後には、“もう続けられない”僕自身が壊れた。

後を追おうとして倒れて、
その“続き”を断ち切ったのは、他でもない僕だったのに。

なのに。

「続きの音が聴けなくなる」なんて言葉を向けられたら、
僕は……どうしたらいいんだ。

続けられなかった僕は、
じゃあ……“間違い”だったのか?

少年の無邪気な笑顔の奥で、胸の深いところがじくじくと疼いた。

痛いって言いたかった。
でも、言えなかった。
言ったら、きっと悲しませてしまうから。

だからただ、

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「……うん」

と笑うふりをして、誤魔化すしかなかった。



────瞬きの間に、少年の姿がすっと消えた。
次の瞬間にはもう、白い空間の静けさだけが僕を包んでいた。

どうして、僕はこんな場所にいるんだろう。
去っていった2人は、現実世界に帰れたのだろうか?
僕はなんで、まだここにいるんだろう。
考えても、答えは出なかった。

幾一のところにも、■■■■のところにも、僕は行けなかった。
迷っているから?
どちらを選ぶべきかわからないから?

違う。

“3人が揃っていたあの場所”以外に、
心の底から行きたいと思えるところなんて、本当はなかった。
でも、それはもう二度と叶わない願いであることも、知っていた。

ならば──どちらを選んでも、きっと同じなんじゃないか。

空虚な考えだけが、ゆっくりと沈んでいく。

気づけば僕は、座っていた椅子に足をかけていた。
その上に立ち、頭上の何もない空間を見上げる。

「……ここにロープがあればいいのに」

ぽつり。
独り言のようなその声は、驚くほど軽かった。

そして僕は、
自分を支えている椅子を──静かに、蹴った。


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