「陽介」
俺が生まれた瞬間、父ちゃんは店の屋上で昇る朝日を真正面から見て、俺を抱き上げて叫んだらしい。
「この子は、みんなを照らす太陽みたいな男になる! だから、陽の字を入れて、陽介だ!!」
「俺の商売も、家族も、この街も、全部照らせるような、まぶしい男に育ててやる!!」
……でも、俺は太陽とは真逆だった。
「うるさい」「暑苦しい」「眩しすぎ」って言われて、みんなの輪からちょっと浮いてた。
父ちゃんの願いは、
俺には重すぎた。
でも、あの日。
砂場で俺の城が崩れたとき、
俺は初めて、太陽じゃなくて、
「暗闇」にいた。
涙が止まらなくて、
鼻水垂らして、
「もうやだ……」って嗚咽してた。
そしたら、
黙って隣に座った駿が、
俺のバケツ持って水汲みに行ってくれて、
一緒に城を直してくれた。
完成したとき、
駿が小さく笑って、
「陽介がいると、全部が楽しいよ」
って言った。
その瞬間、
俺の胸の奥に、
本物の太陽が生まれた。
父ちゃんが願った「みんなを照らす太陽」は、
俺一人じゃなれなかった。
でも、駿がいてくれたから、
俺は太陽になれた。
それから俺は、
「陽介」って呼ばれるたびに、
あの日の駿の笑顔を思い出す。
俺が馬鹿やってみんなが笑ってくれると
全部、全部、
俺の「陽」が、ちゃんと届いてる証拠なんだって実感する。
だから俺は、
どんなに怒られても、
どんなに「うるさい」って言われても、
声を出さないわけにはいかない。
太陽は、
黙ってたら意味がないから。
俺は、太陽なんだから