Record

記録者: 篠崎 駿 (ENo. 18)
Version: 2 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

「駿」

父さんと母さんは、二人で何日も寝る間を惜しんで考えてくれた名前だ。

「活発で、元気で、どこまでもまっすぐに走っていく子になってほしい」

それが願いだったって、後で母さんが教えてくれた。

でも俺、生まれてこの方、走るのは遅い。
幼稚園の運動会では、リレーのアンカーでビリ確定だった。

それでも母さんは、
「駿は自分のペースで走ればいいんだよ」って、
いつも最下位の俺の手を握って、笑ってくれた。

母さんが病気になって、病院のベッドで、
最後に俺の手を握ったときも同じことを言った。

「駿は、ゆっくりでも、誰かの横にいてあげられる子になったね。それでいいんだよ。お母さんの願い、ちゃんと叶ってる」

……そうか。

母さんが願ってた『まっすぐに走る』って、
速さのことじゃなかったんだ。

誰かが疲れたとき、誰かが立ち止まりそうになったとき、俺が横に並んで、「大丈夫、俺がついてる」って歩けること。

それが、俺の『駿』なんだ。

だから今は、「駿」って呼ばれるたびに、
母さんの願いがちゃんと叶ってるって、胸が熱くなる。

俺は、誰かの道しるべになれてる。

ゆっくりでも、確実に、
みんなの横にいられる。

それが、篠崎駿の、母さんがくれた、一生分の宝物だ。