Chapter01-02

記録者: 早瀬 颯切 (ENo. 54)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

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「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

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「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


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「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

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「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


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「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

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「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


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「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

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「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

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「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

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「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


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「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



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「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
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「はあ。異言語ゆえの齟齬ってやつですかね」

少なくともそう受け取ったような答えを蜻蛉は返した。
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「しかし、まあ随分と好奇心旺盛じゃないですか、あんた?
 齟齬で正確でない可能性高いんですよ、
 だのになんでそんな聞きたがりなんですか」

呆れつつ……
内心思う。
続く問答の内容にもよるが、ずいぶん自分に都合の良い状況だと。
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「普通ですか。俺の世界の。
 まーためんどくさい質問きましたね。
 もうやめたらどうです?この問答。
 俺、この通り性格悪いですよ?」

それはそれとしてめんどくさいのは確かなので
言葉遣いで嫌な思いしたくないならやめとけ、みたいな
誘導も試みてはみる。
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「……ま、気が向いてる間は付き合いますよ。
 俺の世界の普通、といっても
 俺が普通の生まれじゃたぶんありませんからねぇ。
 だいたいの推測にゃなりますが」

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「巨大な生物を祖先に、人型に進化した生物が
 あちらこちらで国を構えた世界。
 どいつもこいつも、どれかしらの生き物が祖先なのが俺たちの普通。
 たとえば俺は大まかには虫、もう少し細かくすれば蜻蛉。
 もっと細かく言えばオニヤンマ。そいつから進化した一族。
 ですんで」

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「ニンゲン、なんざいやしません。いちゃあいけない」