Chapter02-04

記録者: ウィルフレッド・メイフィールド (ENo. 13)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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風が通り抜けるような軽い笑い声は相槌のように。
ずっとにこやかに話を聞いている少年は、納得したみたいに数度頷いた後。

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「うんうん!じゃあ次は……ちょっと似たような質問なんだけどさ」

明るさはそのまま、けれど瞳の奥に──ほんの少しだけ鋭さが宿る。

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「君は自分が“正しい”と──思ってる?」

問いかけるトーン自体は軽い。
けれど、その笑顔の裏側から何かが覗く。
あなたの返答を待つ足は楽しげにぶらぶら揺れているのに、
視線だけは、明確に「答え」を探している。

子供の遊びのリズムの中に、
ほんの少しの、刃のような期待。

──あなたは自らを“正しい”と言えますか?

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「僕はさっき言った通り!
 自分の事を正しいと思うから、自分がみんなに聞かせている音が正しいと思っているから、
 僕は笛を吹くし、みんなを導くんだ。だってそうでしょ?」

軽やかに笑いながら、しかし言葉には確信がある。

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「ずっと働かなきゃいけない閉鎖的な村も、
 つまみ食いしたら一日ご飯をもらえないのも、
 重い税金も、いじわるなおばあさんも、変わらせてくれない。
 間違ってるから──導いてあげなきゃいけないでしょ?」


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「自分が正しいって信じてる人はね、迷わずに進めるんだ。
 曲が途切れないんだよ。ほら、楽譜って止まるとそこで“死んじゃう”からさ」

どこまでも明るい声で、
どこまでもまっすぐに、
少年は“正しさ”を語っていた。
──それで、あなたの答えを待っている。
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「……僕がいう正しさというものは
 ただものを測るためのものだ。」
「それを堂々と掲げる気にはならない。」

それこそ本当に物差しのように。
彼は正しさというものを使っているのだろう。
使っているだけでそれを掲げることはしない。
何故ならそれはただ物の長さを測る物だから。
どちらがより正しいか計量する為の物だから。
金の杯でも、なんでもない。ただの道具だ。
彼にとって正しさとは誰もが心の内に持っている道具だ。
そんなものを掲げてどうすると男は首を横に振る。

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「自分の考えを整理する際にその考えが正しいか、
 間違っているのかを考慮することはあるが……
 君が問うているのは答えのない”正しさ”の方だろう?」
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「己の信じる道がどういう物なのか、
 胸を張れるかどうか定める為に使うものの話だろう?」
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「だとすると、悪いが僕には興味がないことだ。
 ……と言わせてもらう以外に台詞が思いつかないな。」

ふう、と軽く息を吐く。
呆れたような、他に何か考えているような……
どこか重みを欠いた息が軽く吐き出されていった。

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「生憎、僕は自己の正当性を示さなければならないような、
 そんな堅苦しい立場にいる者ではないのでね。」
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「自分の今までの道中を信用できるものとして捉えてはいるが……
 多くの事件を解決したからと言ってそんな僕が間違いなく、
 正しい存在だ!……とも言い切れんだろう。」
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「僕自身の在り方が正しかろうが、間違ってようがどちらでも構わない。
 何故なら僕はそのどちらかでありたいと思った事がないからだ。」
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「僕が導き出したものが、真実であればそれで良い……
 隠されたものを暴き立てるのが僕の仕事だ。」

ゆるく両腕を抱き抱えるように組み、
彼はどこか遠くを眺めている。
明るく真っ直ぐ軽やかに正しさを歌う少年を
彼はもう一瞥もしていなかった。

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「暴いたものがいつだって正しい結果を招くとは限らない。
 蓋を開いた結果より悍ましいものを見ることもある。」
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「それでも僕は、真実を知る為に手を伸ばす事をやめられない。」
「僕を突き動かすのはいつだって知りたいという気持ちだけだ。
 正しさなんぞに背を突かれなくても歩いていける。」

静かに彼は目を閉じる。
対話相手くらいしか音を発さない空間の
音を楽しもうとでもするかのように。

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「……僕は君の事情を知らない。
 だから君にあれこれ言う権利はない。」
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「……。」
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「……けれど、僕だって迷わずに進めたさ。
 正しさなんてものを掲げずとも、ね。」