Chapter02-05

記録者: 夏揺 響 (ENo. 56)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
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「悪……か」

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「すまない、少し一息つかせてくれ。
 俺は本来難しいことを考えるのが苦手で……
ついに本人から小難しいこと考えるのが苦手だとぶっちゃけた。
とはいえ嫌、という意味での苦手ではない。
能力的に、と言ったほうが正確だろう。

少し、間が空いて。
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「待たせたな。
 俺が思うに悪、とは立場によって変わるものだと思う」

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「君の音を止めた人は君にとって悪だろう。
 君にも立場がある。
 ただ、俺の立場からすると、そうだな……」

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「……戦っている相手を悪としなければならない。
 結構辛いところだな、上司の」

隊を預かる上官の身。
であれば、本人の心情はどうあれ
表立って声にしなければならない。

敵国は、悪であると。