Chapter01-05

記録者: 結城いこな (ENo. 134)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
 ――問い掛け。
 価値=わたしの、存在について。

 価値――そんなもの、あるとは。
 思えない、けれど。
 人間の価値/命の価値/わたしの価値。
 基準。

 それは――

 ある、わけでは、ない。

 けれど。
 けれども。

 わたしは、ここに在りたい。
 わたしは、わたしを捨てられない。捨てたくない。

 だから。
 だから、わたしは。

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「価値なんて!」


 聴覚――耳朶/叩く=音響。その出所=わたし。
 少なからず、驚いていて――けれども、言葉――止まらなくて。

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「……価値、なんて。わたし、には。……ないけれど。
 けれども、わたしは。……ここに、いて。『結城いこな』、という、名前が、あって。
 物語や、小説、じゃなくて。
 ……生きている、ひとりの、人間。……だから」


 だから。
 だからこそ。

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「……わたし、は。
 誰が、何て言おうと。……どう、言われたと、しても。
 曖昧、で。……ずっと、ずっと、漂っていて。
 ただ。……ただ、それだけ、でも。

 ここに、在りたい。……わたしは、わたし、だから」


 声――震えていた。
 大きな声――最後に、吐き出したのは。……いつ、だったのか。

 息が切れる。
 身体が熱い。
 けれども。……けれども、わたし、は。

 生きている、って。

 想起――久しぶりの、感覚。

 想起――わたしは、生きている。