続くくだらない質問と、シャッター音に僅かに瞳が細められた。しかしほんの僅か、だ。それに何を思うとかじゃあない。
観察対象と呼ばれる男は、カメラ男を微塵もそうとは捉えていなかった。風のどよめきだとか、雨粒が屋根を打ち付ける音だとか。そんな風に思っていた。
やはり男の唇は重く、しかし話し出せば意外にも明朗に続くのだ。

「子供でも。年寄りでも。敵対するものでも。見知らぬものでも、僕は変わらず放置かな。
先にも言った通り僕は僕が悪魔であると自覚してる。僕に利を提供出来ないものに僕が手を差し伸べる必要は無いよ。」
もし彼等が男が被る不利益を捲る程の利益を寄越すなら──そこで初めて思考に至る。そうでなければ、男はそんなものもまた雑草程度にしか思わないのだろう。
しかし、

「親しいもの、は程度と場合によるだろう。」
そんな男にも情はある、らしい。定かではないが。
親しいものなら何としても救うだろうと言わないのは、男なりの分別なのか。悪魔たるもの、そんなものにうつつを抜かす訳にいかないという事なのか。
──或いは、親しいものに“あの子”を想起したか。
少なくとも男は“親しいもの”には親しみを持てる、らしかった。無機物的な男の中の、ほんの少し情動的な部分であるだろう。
誰彼構わず発せられるものではないが。無いよりずっと暖かい。
暖かい、が。今はそれだけだ。
まさかカメラ男を親しいと思う訳も無いのだし。