Chapter03-03

記録者: ミヒャエル・エルドガード (ENo. 99)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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「……そっか」

一言だけをぽつりと落とし、その後の言葉を探すように目が泳ぐ。
何かを言えば軽くなってしまうし、黙れば重くなる。
その中間を彷徨うような視線の動きだった。

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「いや、なんかあんま気の利いた事言えないや。
 テキトーな相槌を簡単に言うのは失礼っていうかさ……」

女は椅子にもたれかかり、髪を指で弄りながらぼやくように言葉を零す。
……指先で“間”を誤魔化しているようだった。

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「……じゃあ、さ、クロ。
 クロって誰かに期待されたりすることって、ある?」

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……誰かに期待されてるって思うの、疲れない?


──あなたは、“期待”に対してどのような感情を抱きますか?


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「ウチさ、親とか先生とか、あと周りの人とか……
 期待されるとさ、なんかこう……自分のペースで動けなくなる気がして」

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「でもさ、期待されるのって悪いことじゃないのも分かるんだよね。
 褒められたり、認められるのって、ちょっと嬉しいし……」

言葉はゆっくりと紡がれていくなか、指先だけが落ち着きなく動く。
笑っているような、笑っていないような声だった。

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「けど、期待ってさ、“応えられなかった時の怖さ”までセット販売なんだよね。
 おまけに“努力不足に見られちゃうリスク”付き」

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「嬉しいのに疲れる。
 ありがたいのになんか苦い。
 クロはそういうの、ない?」

Answer
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「いいわ、その適当な相槌で。」

気を遣って欲しいなんて、求めてもない上に思っていない。
シロがトイカケるから答えるだけだ。

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「期待、ね。」

さて、どうだろう。誰が自分に期待をしてるのやら。

創造主に【期待】という感情は無い。
あることを自分が期待していない。
また、"期待をする誰か"という人物が該当しない。
だからトイカケには【ない】としか答えようがなく…

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「…貴方が『嬉しいのに疲れる、ありがたいのになんか苦い』と思うことは、私から見れば変じゃないわ。ヒトが期待に答えることで、他のヒトに承認して貰える。何か一つの期待に答えたら、それより少し、また少しと大きい期待に答えて欲しいと他のヒトは期待する。」

そうなると、段々"応えられなかった時の怖さ"というものが大きくなる。シロにがっかりした者は"努力不足"と安易に答えるだろう。積み重ねた過程より、出された結果で全てを推し量る。それが、社会。

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「…だから、そうね…貴方がそれを苦痛と思うなら、…こうしたらどうかしら?」

『応えられなかった時に、頑張ったと褒めてくれる人の言葉だけを汲む』

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「貴方にとって、聞き心地に良い部分だけを取り込むの。そうすれば、期待を幾度抱かれても、貴方は少しでも疲れなくなる筈。」

根拠は…レッドドラゴンがそう言ってた、だけになるが。
少しでもこの言葉が、貴方の"成長"に繋がれば御の字だ。