Chapter02-03

記録者: アラビク・ハン (ENo. 167)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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奇抜な色の羽織をひらりひら。
あなたの言葉を頷きながら聴いて、なるほど!なんて相槌を入れた。
少年にとってあなたの言葉は新鮮な音列なのだろう。
ありがとう!なんて言葉は程々に。また次のトイカケがあなたに振られた。

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「ねえねえ、君に訊きたいんだ。
 僕ってさ──いつも思うんだ。“正しいこと”って何なんだろうって?」

少年は笛を軽く指先でくるくる回し、空気に音の波を描くようにして言う。

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「だってさ、僕が吹く笛が誰かを笑顔にしたとき、
 それは“正しいこと”な感じがするでしょ?
 でも、もし誰かが嫌な気持ちになったら……それは“間違い”になるのかな?」


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「ね、君は──“正しい”ってなんだと思う?


──あなたは、何をもって“正しい”と判断しますか?

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「僕はさ、間違いなんてないと思うんだ。
 高い音も低い音も、速いテンポも遅いテンポも、全部必要で、
 楽しさも悲しさもぜーんぶ、大事なものなんだ!
 だから全部正しいって言えるんじゃないかなって」

見えない舞台の上で踊るように広げた両手。
世界のあらゆる感情を抱きしめるかのように、無邪気で貪欲だ。

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「たとえ誰かが“間違い”って言っても、
 そのせいで誰かが笑ったり泣いたり、変わるなら、
 それは正しいことになるんだ!」

少しだけ、笛の端がきらりと光った気がした。
正しさは、正解ではなく──変化そのものなのだと、少年は信じている。

少年は笛を胸に抱き、満足げに微笑んだ。

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「僕は“自分が正しい”と信じてる。だから誰かに間違ってると言われても気にならない!

 君はどう?周りの音は気にしちゃうタイプかな?
 それとも、君も自分の旋律を持っているのかな?
 ──君にとって“正しい”て何?」

Answer
おっと、と少し意外に思う。
正しいとはなにか、ときたか。
先の自分の回答からの流れなのか、それとも単なる気まぐれかわからないけれど。
それでも、それをトイカケられたことを、少しほほえましく思う自分がいた。

自分を信じきっている者は、正しいとは何か、を常に考えたりはしないよ。
他人に何を言われても気にならないかもしれない。
でも、自分自身からのトイカケを無視することは、なかなかできないよね。

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「そうですねえ」

だからまあ、すこしまじめに答えてみようか。
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「教科書的な回答をするならば。
 その場に合った、期待される曲を選ぶこと、でしょうね。
 結婚式にははれやかな曲を。お葬式にはしめやかな曲を。
 空気を読んで、ふさわしい曲を“選ぶ”ことができれば、それはまあ“正しい”でしょう」

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「ですが。
 個人的に好きなのは、場を沸かせられればなんでもいいじゃん、の方ですね。
 結婚式で沈んだ曲を流しても、お葬式で陽気な曲でも、それがウケることもあるでしょう。
 うまくそれを読んで、ウケが取れればそれも“正しい”と言えるでしょう」

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「つまりは。
 結果がすべて、だと思いますよ、正しいも正しくないも。
 ですがそうですね、ええー」

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「自分ではやりもしないくせに。
 他人には間違っている、なんていう奴の言葉を聞く必要はない。
 これだけは“正しい”と思いますよ」