Chapter04-05

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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「もしそういう事なら──……」

あなたの答えを聞き、何か考え込むように魔女の弟子が視線を外す。
思考に入り込もうとしたところで、ふ、と何かに気付いたか
言葉を止めて部屋のある方──先の時にも見ていた方に目をやって、あ、と小さく零した。

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「……次の問いが最後みたいです。
 ほらあそこ……見えませんか?」

魔女の弟子が指し示す方には何も見あたらない。
〝あちら側〟の椅子に座った者にしか見えない、
カウントなのか、時計なのか、何があるのかは分からないが、
何にせよ次のトイカケが彼の最後のトイカケだろう。

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え、えーっと……何の話でしたっけ……。
 ……この部屋の話でしたね」

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「……この部屋がどういう目的のものか。
 あなたの言った通りかも知れないし、
 もしかしたら全くの的外れでもあるのかも知れない。
 答え合わせは僕たちには出来ないのが、ちょっともどかしいですね」

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「……ただ、この部屋が
 誰かが僕たちを見るためのものであった、なら──……」

魔女の弟子は、何かを見ようとするように顔を上げる。
自分たちを見る目を見ようとするように、部屋を斜め上に見上げていた。

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「あなたは……
 この白い部屋に“最後にひとつ言葉を残す”としたら、何を言いますか?


──あなたはこの部屋に言いたい事はありますか?

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「……僕だったら、そうですね」

一度唇を結び、考えを整えるように胸の前で指先を揃える。
迷いと、少しの怖さと、でも確かに自分の言葉を選ぼうとする意志がある。
言葉がまとまったか、再び観測者を探すように顔を上げた。

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「僕たちを選んだ理由が、どうか“意味のあるもの”でありますように」


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「……あ、次に誰かを呼ぶときは。
 その人が怖がらないようにしてあげてくださいね~……」


なんて緩い言葉を添えて、はにかみながら
あなたはどうですか、と視線が問い直した。
Answer
アルヴェンは、フェルヴァリオの答えを聞いたあと何か考え込む様子だった。

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「もしそういう事なら──……」

思考に入り込もうとしたところで、部屋のある方──先の時にも見ていた方に目をやって
あ、と小さく零した。

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「……たぶん、次が最後の問いみたいです。ほら、あそこ……見えませんか?」

指差された先を見ても、フェルヴァリオには何も見えない。

あちら側〟の椅子に座った者にしか見えない、
カウントなのか、時計なのか、何があるのかは分からないが、けれど、直感的にわかる。
──問いを投げる側にしか見えない何かがあるのだと。

何にせよ、空気が変わった。
次の問いが、最後。

アルヴェンは喉を整えるように小さく息を吸い、

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え、えーっと……何の話でしたっけ……。
 ……この部屋の話でしたね」

ゆるく、しかし逃げない声で仕切り直す。
白い空気が、ほんのわずかに張り詰める。

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「……この部屋がどういう目的のものか。
 あなたの言った通りかも知れないし、
 もしかしたら全くの的外れでもあるのかも知れない。
 答え合わせは僕たちには出来ないのが、ちょっともどかしいですね」

視線は宙の見えない何かと、フェルヴァリオの間を行き来している。

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「……ただ、この部屋が
 誰かが僕たちを見るためのものであった、なら──……」

少し、間をおいて。

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「あなたは……
 この白い部屋に“最後にひとつ言葉を残す”としたら、何を言いますか?」

フェルヴァリオは一瞬、固まる。

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「……んえー」

気の抜けた声。

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「最後に残す言葉?言葉って……呪文的ななんか?」

顎に指を当てて考える。

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「……Open sesame開け セサミ!」

ぼそっと言ったその声は、うっすらと竜の唸り声を含んでいた。
やたらと低く、やたらと響く。

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「……じゃなくて」

軽く首を振る。

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「最後の言葉?」

ちょっとだけ眉をしかめた。

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「……もしかして遺言だったりする?」

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「不安すぎない?そういうの。
 はい、これからバッドエンド確定ですって言われてるみたいでさ」

言いながら、おもむろにフラスコの中身をビーカーへ移し替える。
透明でもなく、濁ってもいない液体。

それを飲んだ。

ごくり。

静かに息を吐いて、視線を上げる。

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「……そうだね。最後の言葉は……」

一瞬だけ、空間の温度が上がる。

唇が動く。けれど、それは人間の発音ではなかった。
低く、深く、肺の奥ではなく芯から鳴る声。

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Vahl’drakh, thur vekar… Naem’ir zal目覚めよ 我が名を問え

白い部屋が、わずかに震えた。

音は反響しない。
壁も、床も、天井も
ただ言葉だけを記録したように、沈黙が深くなる。

それは誰かに対する呼びかけだったのか。
それとも、この部屋そのものに対する命令だったのか。

どちらともわからないまま。
白い空間は、ひとつ、見えない呼吸をした。

フェルヴァリオが口にした言葉は、
壁にも、床にも、天井にも反響しなかった。

言葉を知っているのは、たぶん、この部屋ではひとりだけ。
喉が鳴る音すら、ひどく大きく感じる静けさ。

そのときだった。

くす、と。かすれたような、それでいて妙に楽しげな音。
フェルヴァリオは笑っていた。
口元だけ歪めて、わざと答えを隠すように。

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「さあね」

フラスコを指で軽く弾く。

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「誰に向けたと思う?」

焰の気配が、背中でふわりと揺れた。
影がわずかに伸び、一瞬だけ何か大きな口の形を描く。

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「音とか言葉であればなんでもいいんでしょ。」

視線がゆっくりと、アルヴェンではなく部屋の奥へ向けられる。

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「……答えるかどうかは、聞いた側の自由じゃない?」

唇の端が、ほんの少し上がる。
意地悪そうに。

まるでもう気づいているのに、わざと教えない子どもみたいな笑い方だった。
白い部屋は、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、軋んだような気配を見せる。

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「最後の言葉、って言われたからさ」

軽い口調のまま、

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「ちょっと……揺さぶってみただけ」

だが、その目には。
確かにはっきりと、焰の色が宿っていた。