壁の向こうで、アルヴェンはふんふんと頷いた後に
やや深めに折り目正しく頭を下げた。
それからある方へと視線をゆるりと動かして、何かを確かめた様子で頷いた。
フェルヴァリオがそっちを見ても、そこには何も無かった。

「……もう少し問いが必要みたいですね。
そしたら、……そうだ、さっきも気になった事なんですけれど……」
一瞬、視線が彷徨ってから、フェルヴァリオを見る。

「……あなたは、この部屋はどういう目的で
存在している……と思いますか?」
白さが、音を吸う。
フェルヴァリオは机に肩肘をついたまま、片手でフラスコをゆっくり揺らしていた。
中の液体は、いつの間にか虹色に変わっている。
赤でも青でもない。一定しない、境界の色。

「……時間的拘束」
ぽつりと答える。
それから、視線をフラスコに落としたまま続けた。

「うーん……。人に問いを投げる側と、答える側」
フラスコが静かに、しゃらりと音を立てる。

「その二択しか許されてない、って点については……」
少しだけ考える間があり。

「互いの思考力を探っている。
たぶん、それ以上でもそれ以下でもないと思う」
アルヴェンの気配が、少し強くなる。
フェルヴァリオは小さく息を吐き、

「信仰でもないし、罰でもないし、実験でもない。
……単に、測ってるだけ」
虹色の液体が、光を反射して壁に滲む。

「どこまで考えられるか。どこで詰まるか。どこで嘘をつくか」
フラスコをそっと止める。

「……そういう部屋」
白い空間が、僅かに圧を持ったように感じられた。