Chapter04-02

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

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彼の視線は壁へ、床へ、そしてあなたへ。
どこかで落ち着きどころを探しているようだったが、
それは“怖がり”というより“状況を整理しないと落ち着かない”という
彼の性分そのものに見えた。

魔女の弟子はあなたの答えを丁寧に聞き取った後、
目元にわずかな影を落として考え込んだ。

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「有難う御座います。
 ……参考にさせていただきます、うちの師匠が
 この部屋と似たような事をやらかしかねないので……」

……どうもこの魔女の弟子は苦労人らしい。
破天荒な魔女に振り回されているタイプの弟子なのかもしれない。

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「……もしよければ、もう少しだけ質問をしてもいいですか?
 またいくつか問い掛けないといけないようなので……」

何かを確かめたような視線の動きの後、そう口にした。
どこかに〝猶予〟が記されでもしているのだろう。

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「僕……こういう“空間の乱れ”みたいな現象には何度か遭遇してきたんです。
 主に師匠の……ああ、いえ、魔女の実験の副作用なんですが。
 でも……今回のは、それとは“質”が違う気がするんです。
 形は似ていても、根本が違う……というか」

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「……異なることわりと接触する橋の上に居るような、
 世界のあいだにいるような、そんな……」

そこまで言って、息を呑む。
それは不安や恐怖を呑み込むような仕草にも似ていて、
けれどもそれを貪欲に知りたがる様な研究者的な好奇も滲んでいた。

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「あなたは今までこうやって──
 異世界と接触するような状況に遭った事はありますか?
 ……無かったら、この部屋で他人と出逢うことに……どんな気持ちを抱いてますか


──あなたは異世界に関わりを持ったことがありますか?
──また、この部屋での邂逅をどう思っていますか?


Sample
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「……似たような経験はしてると言ってますけど、
 実のところ異世界と交信みたいなことは経験が無くて……。
 まさかこうして異世界と関わりを持つなんて!」

魔女の弟子は指先をそっと胸元へ寄せる。
息を整えるように、深くひとつ吸って──それから微かに笑った。

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「こうやって断片的にだけでも話せて、楽しい反面……怖いです。
 “未知”って……危険とは限りませんけど、油断も出来ないですから」

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「僕は……きっと異世界に関わるような事があったら、
 怖いと思いながらも……関わりたくなっちゃうとは思います。今みたいに。

 『魔女の弟子』だという外聞が無くなって『ただのアルヴェン』である場所でも、
 きっと僕は、『魔女の弟子』であることを喧伝しながら、異世界に関わるんでしょう」

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「……思った以上に僕、
 『魔女の弟子』である事に誇りを持ってるみたいです」

あんまり参考になる意見じゃないかもな、と恥ずかし気に頬を掻いて、
あなたはどうですかと改めて魔女の弟子はあなたにトイカケを差し出した。
Answer
壁の向こう側越しに、アルヴェンが首を傾げた。
問わなければならないという衝動だけが、胸の奥で静かに鳴っている。

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「異世界と接触するような状況に遭った事はありますか?」

少し間を置いて、言い直すように。

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「……無かったら、この部屋で他人と出逢うことに……どんな気持ちを抱いてますか」


白い空間に、言葉だけが浮かぶ。

フェルヴァリオは、乳鉢を回す手を止めない。
金属音と薬草の擦れる音が、静かに鳴り続ける。

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「異世界? めっちゃくちゃあるね
 むしろ……異世界の番人みたいなことしてるし」

すごくあっさりと。
フラスコの中身を慎重に火にかけながら言う。

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「いや、番人っていうか……
 魔法の均衡を保ってる、が近いかな。うん」

アルヴェンの目が、すこし丸くなる。
フェルヴァリオはちらりと一瞥して、また手元へ視線を戻す。

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(……本当は、黙っててって言いたいけど)

口には出さない。
小瓶に液体を注ぎながら、続ける。

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「ま、簡単な質問だし。手間にはなってないね」

壁の裂け目の向こうで、アルヴェンは小さく息を吸った。

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「……あの、じゃあ……」


何か、次の問いが喉まで来ている顔をしている。
白い部屋は、また少しだけ広がった気がした。

アルヴェンが「……じゃあ」と言いかけたタイミングで、フェルヴァリオのほうから言葉が落ちた。

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「異世界ってさ……別に大げさな話じゃないんだよ」

乳鉢を回す音。
火にかけたフラスコの中で、液体が小さく揺れる。

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「空の色が違うとか、時間の流れ方が歪んでるとか、
 そういうズレの集合体、みたいなもん」

アルヴェンは息をひそめて聞いている。

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「大体の場合、人間は気づかない。でも放っておくと魔力が濁る。種が狂う。歴史が歪む」

ピンセットで粉末をつまみ、慎重にフラスコに落とす。

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「だからオレは……境目を塞いだり、歪みを燃やしたり、余分なのを沈めたりしてる」

番人というより、管理人みたいな声色だった。
フェルヴァリオは小さく肩をすくめる。

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「慣れるよ。異世界ってさ、人間が思うより静かだし」

少し思い出すような間。

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「宇宙が天井にあった世界とか。時間が後ろ向きに流れてる場所とか。
 名前を持たない魔法だけが生きてる世界とか」

どれも断片的で説明しようとはしない。

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「でも……」

フラスコを持ち上げて、光に透かす。

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「こういう白い部屋みたいなのは、ちょっと珍しいかも?」

アルヴェンの視線が少しだけ鋭くなる。
フェルヴァリオはさっきまでと同じ、作業口調で続ける。

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「だってさ。ここ、世界がないんだもん。境界だけでできてる部屋で
 壊しようがないし、塞ぎようもないし、燃やす基準もない」

さも当たり前のように言いながらひとつ息をつく。

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「……だから、ちょっと気持ち悪い」

作業は止まらない。
火の音、ガラスの音、細い金属音。