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記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 3 | 確定日時: 2025-12-10 04:00:00

まぶたを開くと、視界にまず飛び込んできたのは──

 フラスコがひっくり返った音。
 カラン……と細いガラスの転がる音が、静かな部屋に妙に響いている。
 フェルヴァリオは、はっと飛び起きた。

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「……えっ?」


 自分が倒れていた寝台。いつもの調合部屋。焰の明かり、薬草の匂い。
 どれも現実だ。

 なのに──

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「なん、で……?」

 調合机の上は嵐が過ぎた後のようだった。

 フラスコが横倒し、素材の袋が半分こぼれている、
 羊皮紙は床に散乱し、なぜか金の天秤が逆向きに置かれている。
 さっき仕込んだはずの液体が、見知らぬ色に変化している。

 フェルヴァリオは頭を押さえ、気だるげに言葉を漏らす。

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「……誰だよ、勝手に触ったの……?」

 だがすぐ思い出す。

 白い部屋。
 白い椅子。
 解けそうで解けない問い。

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「……夢、だったはず……だけど」

 調合机に落ちている紙切れ。それを拾い上げる。

 そこには、丸い字で一言だけ書かれていた。

《またどこかで》

 フェルヴァリオは固まった。

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「…………は?」

 息を呑む。心臓がドクンと跳ねる。

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(いやいや、いや……そんなわけない。夢だ。夢でしょ?夢に決まってる……はず……だよな?)

 しかし散乱した道具も、見知らぬ色の液体も、そしてその紙片も。
 どれも現実の重さを持っていた。
 フェルヴァリオはゆっくり、机に両肘をつき、額を押さえた。

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「……ほんっと……誰なんだよ、あれ」

 呆れたような、困惑したような、そしてほんの少しだけ楽しそうな声。

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「どこかで会う前に……。散らかった部屋、片付けなきゃな……」

 言いながらも、フェルヴァリオの指先は微かに震えていた。