【これまで、これから】
◇
シャルティオ・アンディルーヴは
“出来損ない”の王子である。
彼の持つ猛毒の魔法は、彼に数多の試練を与えた。
そもそも、彼の所属する魔導王国は。

「……属性魔法が使えない人間に、
一切の価値を認めない王国だ」

「私の持つ毒の魔法は、
“一般的な属性魔法”ではないんだとよ」
シャルティオ・アンディルーヴは、
そんな王国の王子として生まれた。
生まれて、しまった。
だから。

「……出来損ない扱いは当たり前。
私は属性魔法が使えないから、
どんな仕打ちを受けても文句は言えない」

「…………もう、過ぎた話だが」
偉大なる女王である母親に認められたくて、
血を吐くような努力を重ねたこともあった。
貴方にこそ愛されたかった、の想いは、
されど報われることなく全てが終わった。
“愛されたい”のその想いは、痛みとして残ったんだ。

「………………」
◇
流れる猛毒の血は、シャルティオ自身をも傷付けた。
昔にあった魔力の暴走。
それによって少年の左眼と左脚は腐り落ち、
危うく死ぬところだった。

「……兄さんとキィルが居なかったら、
私はあの日にとうに
冥界に消えていたんだろう、ね」

「私の家は家族すらも敵だったけれど……
2番目の兄さんだけは、
フェンドリーゼ──フェン兄さんだけは、
唯一、最初から最後まで味方だったんだ」
ずっと気に掛けてくれた兄がいた。
こんな出来損ないの自分を、
『風の気紛れ!』で助けてくれた、兄が。
その兄は戦争に乗じて母王を殺し大罪人となり、
シャルティオを自由にしてから、
国を永久追放されて今はもう何処へやら。

「私は母上に
愛されたいと強く願っていたから…………。
母上が私を虐げていてもね、
母上のことを大切に思っていて」

「そんな母上を殺して、
“私が母上に愛される機会”を
永遠に奪った兄さんを…………
あの頃は本気で憎悪していたんだ」
それが、あの兄なりの愛とは知らずに。

「……ありがとう、兄さん。
貴方のお陰で僕は、
今も元気にやっているよ」
優しい風を感じるたびに、思い出す。
そんな兄に託されて、
出来損ないの王子様は王になった。
兄の従者であった魔法破壊のキィランは、
兄の最後の命令によって
シャルティオの従者へと立場を変えた。
民は未だ、この王を認めない。
けれどシャルティオの必死の行動は、
少しずつ民の心を動かしている、はずだ。

「私はこの魔導王国を変えてみせる。
千年の栄華の下で、
非魔法民たちが虐げられる、この国を」

「兄さんもキィルも、
私が私だからこそ、王にしたんだ。
虐げられる立場にあった私は、
その痛みがよく分かる」

「──必ず、必ず、応えてみせる」
我が名は革命王シャルティオ・アンディルーヴ。
魔導王国に変革をもたらす者だ!
過去に二度、
闘技世界フラウィウスへ迷い込んだのはまた別の話。
そこで少年は素敵な友達と“家族”を得て、
前へ進む為の翼を手にした。
そんな色々を経て、今に至るのだ。