Chapter02-05

記録者: 御守 瑠海 (ENo. 140)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
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「正しいがわからない僕に、悪いがわかる訳ない……なーんていいそうなところだけど。
 うん、でも絶対に許せず、するこもない悪いことが一つあるんだ。」


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「考えないこと。
 僕はそれだけは許せないし、自分自身もしない。
『人間は考える葦である』という言葉を知ってるだろうか。
 宇宙から見れば人間は容易く折れる葦と変わらず、
 だが、思考することができる故に、ただの葦にはならず、
 思考にこそ尊厳を置くべきだと。
 あぁ、まさしくその通りだとも。
 思考することこそ人間という存在を定義付けるものであり、
 思考しなければ、僕という存在に意味はない。」