Chapter02-01

記録者: 御守 瑠海 (ENo. 140)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたが以前来たあの部屋と、まったく同じに見える。
壁に触れても感触は無く、すり抜ける事も出来なければ
もうひとつの椅子を見る事も叶わない。

──あなたが椅子に座れば、部屋は拡張されたように感じる。
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。

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「あれ?」

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「あはっ、すごい。君っていつの間に居たの?
 ちっとも気付かなかった!だってさっきまで誰も居なかった、
 君の音はひとつも聴こえて居なかった!きっと何かが君を導いたんだね」


奇抜な色彩を纏った少年が、にこやかに楽しげにあなたを見ている。
足をぶらぶらと揺らしながら、まるで軽やかな旋律そのもののようだった。
胸元に下げた横笛が、少年の小さな動きに合わせて微かに揺れ、
そのたび、金属が擦れ合う透明な響きが空気を震わせる。

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「ね、僕さ、訊いてみたい事があるんだけど、いい?
 きっとこれは風の導き、新しい楽章の予感!
 今まで聞いたことのない音に出会えそうな気がするんだ!」


少年はあなたに体を傾け、目を輝かせる。
質問を投げかける瞬間でさえ、ひとつの“旋律”を紡ぐように。

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「──君はさ、大人になるってどういうことだと思う?


──あなたは“大人”とは何だと思いますか?

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「僕はね、毎日新しい音を探してる。
 繰り返しばっかりの退屈な道ばっかり歩いてたら、その曲は死んじゃうでしょう?」

空中に弧を描くように指先を動かす。
まるで目に見えない五線譜に、音を刻むみたいに。

その仕草に合わせて、笛が揺れて微かに音を鳴らしたような気がする。
それが空耳なのかどうか、判断できない。

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「僕から見たら大人って、死んだ曲をずっと流してる人たちだ。
 一体何が楽しくてそんなことをしてるのか、僕には全然分かんない!

 君はどう思う?大人ってもしかして僕が知らないだけでもっと楽しいものなのかな?」

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「大人というのは一般的にある程度成熟した状態であるとされる。
 肉体的な意味においても精神的な意味においてもね。
 だが、僕は人というものは生きている限り成長し続け真に成熟されることはないと思っている。」


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「だがまぁ、それで人は大人になることはない。と結論付けるのはつまらないから、より掘り下げよう。
 大人になることを成人というが、そもそも成人がいつとなるかというのは時代や文化によって変わる。
 ある一定の年齢になれば自動的に成人とされるものや、儀式や試練などを行い、それを乗り越えれば成人とされる文化など。
 前者であれば望む望まないに関係なく自動で大人という事になるが、後者であれば自らの手で成人しなければならないこともある。
 だがどちらにしても変わらないことがある。
 それは、周囲の人間が無条件に助けてくれることがなくなるという事だ。
 子供であれば、無条件に施しを貰うことも多いが大人はそうはいかない。
 さて、長々と語ったがこのような違いがあるという前提のもと結論を出せばこうなる。
 大人とは、周囲の人間が、施しを必要としないと判断される者のことだ。」