Chapter03-04

記録者: ミラ・ステラウィッシュ (ENo. 144)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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女はじっとあなたの言葉を聞いて、それで、
ふ、と何かを思ったようにあなたに視線を向ける。

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「……あのさ。
 誰かのために生きるって、なんか難しいと思わない?」

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「ああごめん、急にさ。でも……ウチ思うんだよね。
 期待されて、期待に応えようと頑張るじゃん?
 勿論そりゃ、応えるのって義務じゃないけど……出来れば応えたい、じゃん?」

自分の指先でもてあそぶ髪の毛が、ゆるく揺れる。
その指先は、癖のように、逃げ道のように、同じ束を何度も撫でていた。

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「誰かのために頑張るのって、嫌いじゃないんだよ。
 でもさ、その“誰かに似合う自分”を続けなきゃいけないのが、ちょっと怖い」

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「ウチ、そんな器用じゃないし。
 似合う自分のサイズ、毎回ぴったりじゃないんだよね。

女はくすっと笑う。
その笑いは軽いのに、どこか無理に持ち上げた声色だった。

そして、あなたを少し覗き込む。

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「クロは、自分の価値ってどこに置いてる?
 ……他人をどれだけ、自分の価値に使ってる?


──あなたは、自分の価値に他人の評価をどれだけ使っていますか?

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「“誰かのために”動こうとするとさ、
 結局ウチ、自分がしんどくなっちゃうんだよ。
 都合よく使われてる感じ、というか……」

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「でも逆に、全部“自分のため”だけにすると、
 それはそれで空っぽになるんだよね。
 なんかこう……味のしないガムを噛んでる感じ」

だから、と言いかけた口を噤む。
ちょうどいい言葉を探す様に視線が白い天井を揺れて、
ああ、と小さな声を零して、ようやくあなたに視線が戻った。

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「……誰かのために頑張るのって、
 “その人に向けた”自分の“好き”って感情なのかもな」

それで、少し照れくさそうに笑う。

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「ウチは、その“好き”が続けられるかが自分にとって大事……だと思う。
 相手が好きって事……じゃなくて、好きって感情を持てる自分のほう。
 “好きを与えられる自分”、が一番価値がある、と思う……のかな」

うまくまとまらないや、なんて苦笑気味に言った後、
息を細く吐き、椅子にもたれ直す。

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「……ま、そんなに上手くいかないんだけどね、現実は」

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シロの言葉を聞き、その瞳を覗き込むように夕日色の瞳を向けていただろう。
紡がれる言葉を頷きながら聞き終えて、少し目を伏せてから再び、夕日の瞳をシロへと注ぐ。
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「シロは、その人のために生きたいと思うような大切な相手がいるのね。素敵ね。」

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「私もそういう人がいるわ。その人のためになにかしたい。幸せにしてあげたい。私の可愛い妹のために出来ることをしたいと思っているわ」

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「すこし違うとしたら、妹は私に叶えてほしいと期待している訳では無いことかしら。私は妹がしてほしいと思っていることを出来てるかは分からないわ。そうでないこともあると思う。なかなかうまく行かないところね」

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「それに、妹のため、と言って色々するのは結局『私がそうしたいから』なのよね。本当に妹のためを思うなら、動かない方が良いときもあるのかも知れないわ。でも、そう出来ないでしょうね。」

眉を下げて少し困ったように微笑み、ゆっくり目を閉じて再び開く。

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「シロの、大切な相手のために努力する自分を肯定できるのはとても素敵なことね。きっと、シロの大切な人はシロのことが好きなのでしょうし、信頼して期待するのね」

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「頑張りすぎないで、休み休みいきましょう? シロは頑張り屋さんのようだから、無理しないように気をつけて。」

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「私はね、そういう頑張っている人がゆっくり一息つける、そういう場所を提供したくてお店をやってるのよ」