
「あらあら。そんな気の利いたことを言うことはないわ。私もそんな事は大した言ってないもの。気楽にお話しましょう?」
両腕を広げて空気の流れを作り、沈黙の重さを打ち消すようにして微笑むだろう。
次の問いかけには一つ頷いた。

「そうね、お店に来るお客さんに、美味しい料理があるかとか、居心地はいいかとか、期待に応えないと行けないことはあるわね」

「でも、私のお店の場合、その期待に答えることでお金を貰っているから、少しシロの思うところとは違うかしら? この場合は最低限お金のやり取りがあるものね。それが本心でも、本心とは違っても」

「何かしらの関係があって、形に見えない期待、見えないし測れない信頼という価値ね。こちらはやり取りし合うものではなくて、期待を持った人の中で変化するものね」
言葉を探すように少し目を伏せ、そこまで言葉にして一息つくと再び視線をシロに戻して微笑む。

「シロはとても気遣い屋さんなのね。期待にちゃんと応えようとしていて。裏切りたくないと、失望されたくないと頑張るのね」

「頑張り屋さんのシロはとても偉いと思うけれど、私は怠け者だから、そんなに頑張らなくても良いんじゃないかしら、と思うわ」

「頑張りすぎると無理を言われることもあるし、出来ることをできるだけやって、出来ないことは出来ないから助けて、って相手に甘えるくらいで良いんじゃないかしら」

「期待されるだけじゃこちらが重たいし、シロ自身も言った通り、期待されるのは嬉しいこともでもあるもの。期待し返すのも、案外相手にとって嬉しいことだったりするものね」
パチっとウィンクして、そう結ぶだろう。