Chapter03-01

記録者: ミラ・ステラウィッシュ (ENo. 144)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

またあの部屋に来たようだ。
小さな部屋には相変わらず椅子は一つきり。
壁を向いた椅子の先には、やはり何も見えない。

──あなたが椅子に座れば、
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。
三角に身体を縮めて座っていた
長い髪を気だるげに結んだ白い服の女が、
あなたに気付いた様子で緩慢に顔を上げた。

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「……えー……なんか居るんだけど。どゆこと?」

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「あー……まあ……ども。
 名前とか……あー…じゃあ、シロでいいや、この部屋白いし。
 君は……じゃあクロ。なんかぼんやりしてるし」

知らないもの同士、名前を名乗るモンでもないでしょうと。
シロを名乗った女は畳んだ身体をほどいて、
んん、と小さな声を漏らしながら伸ばす。

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「……こーいうのって、なんかあったよね。
 白い部屋に閉じ込められて……なんか……出られない部屋的な?
 初対面でこんなんされてもおもんねー……」

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「なんかこの白さ落ち着かねー……、
 内側をざわざわ触られてるみたいなー……。
 なんでこんなとこにウチら集められたんだろ。おもろい話なんてできねーっつの……」

嘆息ひとつ零した後、
白い部屋の隅の方に目を遣って、女はぼやく。

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「まー……夢ん中……なんかな。何話してもいいっちゃいいのか。
 クロだってウチの無意識が作った偶像みてーなもんかもだし……
 返事返って来るかもわかんねーし、適当こくか」

女は髪を束ねているリボンをいじる。
それは落ち着かない子どものようであり、退屈を紛らわせる大人の仕草にも見えた。

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「クロはさ、生きる理由とかって何だと思う?


──あなたには生きる理由はありますか?

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「別に生まれた時点で生きる理由とか要らね―とは思うけど、
 あった方がちょっと嬉しいというか、豊かな気がするんだよね。
 親が望んだから生まれた、以外の意味があった方が……なんかいいじゃん?」

言いながら、女はリボンをきゅっと締め直す。
その指先だけは、妙に確かだった。

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「生きる理由ってより人生の目的……って言う方が正しいのかも。
 小さい時からなんか、皆と一緒に~とか、大人の言う事を聞け~とかで
 結局どう生きたいかって全然分かんないなーってさ?

 ガチガチに矯正したくせに、急に「自分のやりたい事をやれ」って放り出されて、
 なんかそのまま今になっちゃった、みたいなさ……」

あなたをじっと覗き込む。
その視線は、答えを求めているようで、ただ誰かと共有したいだけのようでもあった。

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「クロはそういうのあんの?
 ウチも生きる理由っての──拾えるもんなら拾いたいんだよね。……皆目的に向かって歩いてるのに、
 ウチ一人だけ足を止めてる気がして、怖いからさ」

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見慣れ始めたイスを見つけて唇の端を釣り上げ、慣れた様子で腰掛けた。
向かいのイスに現れた女性、シロと名乗る彼女の気だるげな様子に微笑んだまま答える。
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「こんにちは。あなたはシロ、私はクロね。」

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「あら、白い部屋は苦手? 病室みたいだからかしら? 」

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「あなたはこういう場所に来るのは初めてではないの? 私は初めてだから新鮮だわ。まぁ、他にできることもないのだし、適当に話しましょう? 」

にこりと微笑み、シロの問いかけを待つだろう。

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「生きる理由、ね。そうね、私が生きる理由は妹を可愛がるため、かしら」

瞬きを一つする間に思考を整え、言葉を紡ぐ。

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「人見知りをするけど、親しくなれば甘え上手でものしりな可愛い妹がいるの。その子が私の生きる理由よ」

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「より正確に言うなら、生きようと思う理由、かしらね。無くしても直接死ぬわけではないけれど、生きていても仕方がないと思うような、そんなものね」

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「そうね、これは私を強くしてくれる理由でもあり、きっと私の弱点にもなるのね。そういうものなんだわ」

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「あなたが気付いていないだけで、もしかしたらもう、そんな理由を持っているかも知れないわよ?」

ふふ、と笑みをこぼしてシロを見つめているだろう。