
優希
「そう。そんなことを言っていただけて光栄だよ。君は…私が間違いばかりを犯してしまったなんて嘆いていた心に、一筋の光をくれた。」
この言葉には、嘘偽りない。
どうしても許せなかった己のことを、少し許せた。今日は…いい日になりそう。

優希
「ありがとう、名も知らない少年。次は…君の演奏が聴けたらいいね。」
なんていう椅子の先に、もう少年の姿はなかった。
…立ち上がれば、お互いに視界から消えるのか、この椅子は。
なんだか…すごく不思議な感じだ。
ひとまず、私も…帰ろうか。なんとなく、眠れば帰れるような、そんな気がして。私は椅子から立って、なんとなく地面に伏せて、目を閉じた。
意識は、溶けゆくチョコレートのように、甘く、静かに溶けて、沈んでいった。
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先生
「………………おい、終わったぞ」
その一言で、私は目が覚めた。…どうやら、眠ってしまっていたらしい。
…夢の中で…誰かと、有意義な議論を交わしていた…そんな覚えがある。

優希
「んあぁ…いつから寝てました…?私…」
なんて言いながら、検査台から体を起こして、車椅子に乗り変える。

優希
「先生〜、今日はなんか終わるの早かったですね〜?」
あんまり時間が経っていないように思えて、私は先生にそう投げかけていた。
けれども、そんな私の問いかけに、先生は呆れたような顔をして。

先生
「あのなあ…、言っとくけど!お前が!!爆睡!!!してただけだから!!!!」
移動とか大変だったんだぞお前!起きるまで待ってやろうかとか思ってたけど!ぜんっぜん起きねえんだからお前!なんて言われてしまった。
いやでも、体感30分も経っていないのだ。だって…なんて言いながら私は先生の顔を見ながら話し始める。

優希
「えぇ〜、だってほら、先生時計見てくださいy……え?!も、もうこんな時間なのか?!」
先生にほらな〜なんて顔をされ、ほんとだぁ〜、なんてちょっと笑って。
…笑ったのなんかいつぶりだろうか。
なんだか、こんなに心が安らかなのは久しぶりだ。
しばらくはこの夢の余韻らしきものを多少楽しんでも、バチは当たらないだろう。
…あ、そうだ、バックトラッキング。あれを…病室に戻ったら試してみよう。
そんなことを思いながら、私はまた先生に雑談を投げかけるのだった。