Chapter02-05

記録者: 楓 優希 (ENo. 188)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
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優希
「……そうだね。悪さ。…悪さか…。」

一つ、間をおいて。

…あの時のことが、また何かに引っ張られたように、頭の中に流れてくる。

私がした行動は…己の命を守る、という点では正しかった。
けれども、研究員たちの間では、親を助けようとしないなんて、お前は悪だと言った。

また、他のものは正しくも正しくなくもなかった、なんて言って。起こるべくして起こった、なんて、誰のせいにもしないで。
そんな浮いているような考えだって存在した。

…くだらないことを思い出してしまった、なんてため息をつきながら、わたしはまた脳内に浮かんだ答を伝えていく。

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優希
「悪さ、というものは…人のエゴでしかない。時にはそれが正しく、また時には間違っている。それを全て悪いと称することは…人間にはできないさ。」

何せ、正しさ悪さなんて、人間の間での話でしかない。
それを動物に置き換えれば、それは途端に悪でも正でもなくなるものばかり。

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優希
「だからただのエゴ、なんだ。…そもそも、誰かにとっての正義は誰かにとっての悪、なんて言葉がある以上、人の正しさの裏面に悪さというのは付きまとうものさ。」

…また、思い出す。…あの人は、何をしても誰かに反発を受けてきていた。それで感覚がおかしくなってしまっていたんだろう。

…私の、最後の願いの言葉すら、彼らには届かなかったのだから。

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優希
「何にも、裏と表は存在しているからね。コインを思い浮かべてくれればいいかな。そのどちらを裏か表か…決まっていなかったとしよう。そうすると…決めるのは難しいだろう?ある人はこっちが表だと、ある人はそっちは裏だというように。…正義と悪も同じことだよ。」

理解できるかな、なんて笑って。しかし、彼は頭が切れるように見える。
こんな簡単な話を理解できないわけはないだろう。

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優希
「だから、君の場合。君で言う正しさが、彼らにとっては悪だった…それだけの話だよ。」

だから、まあ…何も悪くはないんじゃないか。ただ…いうことを聞いたことなんかない私がいうのもなんだけれど、いい大人のいうことは聞いたほうがいいかもね、なんて笑って、私は次の問いかけに備えて深呼吸して。
さっきまでの思考で波立った感情を収めていくのだった。