Chapter02-04

記録者: 楓 優希 (ENo. 188)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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風が通り抜けるような軽い笑い声は相槌のように。
ずっとにこやかに話を聞いている少年は、納得したみたいに数度頷いた後。

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「うんうん!じゃあ次は……ちょっと似たような質問なんだけどさ」

明るさはそのまま、けれど瞳の奥に──ほんの少しだけ鋭さが宿る。

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「君は自分が“正しい”と──思ってる?」

問いかけるトーン自体は軽い。
けれど、その笑顔の裏側から何かが覗く。
あなたの返答を待つ足は楽しげにぶらぶら揺れているのに、
視線だけは、明確に「答え」を探している。

子供の遊びのリズムの中に、
ほんの少しの、刃のような期待。

──あなたは自らを“正しい”と言えますか?

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「僕はさっき言った通り!
 自分の事を正しいと思うから、自分がみんなに聞かせている音が正しいと思っているから、
 僕は笛を吹くし、みんなを導くんだ。だってそうでしょ?」

軽やかに笑いながら、しかし言葉には確信がある。

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「ずっと働かなきゃいけない閉鎖的な村も、
 つまみ食いしたら一日ご飯をもらえないのも、
 重い税金も、いじわるなおばあさんも、変わらせてくれない。
 間違ってるから──導いてあげなきゃいけないでしょ?」


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「自分が正しいって信じてる人はね、迷わずに進めるんだ。
 曲が途切れないんだよ。ほら、楽譜って止まるとそこで“死んじゃう”からさ」

どこまでも明るい声で、
どこまでもまっすぐに、
少年は“正しさ”を語っていた。
──それで、あなたの答えを待っている。
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優希
「………………私は………………」

言葉に詰まる。
心の裏側を全て覗かれたような気持ちになる。

さっきまでうまく抑え込めていた心が、破裂するように溢れ出してきた。

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優希
「…………私は、…私の行動が、……正しいと思っていた・・・・・。けれど…今は、それが正しいかどうか…ハッキリとも、…ぼんやりすらわからないんだ…。」

………………どうやら面倒なことに、さっき君が言ってくれた、"間違いなんてないんじゃないか"、という言葉一つに、私のすべての心が救われてしまうほど、この気持ちは単純ではないらしい。

とりあえず、まずは静かに深呼吸して、ゆっくりと思考を整理し始める。

仮にこれが間違いだったとて…私は、この歩みを止めることはない。私は、私の演奏を止めることはない。ただ……進み続けることに、大きな迷いがある。

だって、大きな道標だったはずの人たちを失ってしまって、今私は深い森のどこにいるのかすら、自分じゃあわからないような状況にあるのだ。

今の私の演奏は…多分、そのせいで、たくさんの不安定な音が、たくさんの迷い音があって…音階にハマらない音が出て、テンポもぐちゃぐちゃになっているのだろう。

それだけ…大きな障壁なのだ。ずっと目指していた道標が、突然すべて消えてしまう、ということは。

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優希
「さっき言っただろう?私は、自分が、世界で1番信用できて・・・・・・・・・・世界で1番信用できない・・・・・・・・・・・、と。」

己が進んだ場所が道になる。

誰か、偉い人がそんなことを言っていたようなことを思い出したが…私は、それは違うと思う。

なぜなら、強い人が切り拓けば、そこは道になる。
強い人が、踏み固めれば、そこは道になる。けれども…
私達のような弱い人間が藪の前に立ったって、後戻りをするか、別の道を探すか、以外の選択肢なんか、ましてや、藪を掻き分けて進むなんて選択は、絶対にないのだ。

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優希
「…ごちゃごちゃ言ってしまってすまない。…質問の答えはこうだよ。」

脳みそが暴れて、考えがうまくまとまらない、そんな頭でも私は、必死に考えを巡らせていた。
…………私は、ひどい怖がりだった。誰かが進んだみちを、辿っていくだけでも精一杯の勇気が必要で。けれども、強い父や、教授なんかが、私の手を引いてくれたから、私は進み続けられてきたんだ。なのに…

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優希
「私は、自分の正しさを信じきれていない・・・・・・・・んだ。」


今は、誰もいないんだ。進み続けるための、勇気をくれる存在が。


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優希
「………………愚かで、弱いね、私は。……君のような強さが、欲しいよ。」

そう、最後に一言だけ言って、私は涙を止めることに集中し始めた。