
優希
「………………私は………………」
言葉に詰まる。
心の裏側を全て覗かれたような気持ちになる。
さっきまでうまく抑え込めていた心が、破裂するように溢れ出してきた。

優希
「…………私は、…私の行動が、……正しいと思っていた。けれど…今は、それが正しいかどうか…ハッキリとも、…ぼんやりすらわからないんだ…。」
………………どうやら面倒なことに、さっき君が言ってくれた、"間違いなんてないんじゃないか"、という言葉一つに、私のすべての心が救われてしまうほど、この気持ちは単純ではないらしい。
とりあえず、まずは静かに深呼吸して、ゆっくりと思考を整理し始める。
仮にこれが間違いだったとて…私は、この歩みを止めることはない。私は、私の演奏を止めることはない。ただ……進み続けることに、大きな迷いがある。
だって、大きな道標だったはずの人たちを失ってしまって、今私は深い森のどこにいるのかすら、自分じゃあわからないような状況にあるのだ。
今の私の演奏は…多分、そのせいで、たくさんの不安定な音が、たくさんの迷い音があって…音階にハマらない音が出て、テンポもぐちゃぐちゃになっているのだろう。
それだけ…大きな障壁なのだ。ずっと目指していた道標が、突然すべて消えてしまう、ということは。

優希
「さっき言っただろう?私は、自分が、世界で1番信用できて、世界で1番信用できない、と。」
己が進んだ場所が道になる。
誰か、偉い人がそんなことを言っていたようなことを思い出したが…私は、それは違うと思う。
なぜなら、強い人が切り拓けば、そこは道になる。
強い人が、踏み固めれば、そこは道になる。けれども…
私達のような弱い人間が藪の前に立ったって、後戻りをするか、別の道を探すか、以外の選択肢なんか、ましてや、藪を掻き分けて進むなんて選択は、絶対にないのだ。

優希
「…ごちゃごちゃ言ってしまってすまない。…質問の答えはこうだよ。」
脳みそが暴れて、考えがうまくまとまらない、そんな頭でも私は、必死に考えを巡らせていた。
…………私は、ひどい怖がりだった。誰かが進んだみちを、辿っていくだけでも精一杯の勇気が必要で。けれども、強い父や、教授なんかが、私の手を引いてくれたから、私は進み続けられてきたんだ。なのに…

優希
「私は、自分の正しさを信じきれていないんだ。」
今は、誰もいないんだ。進み続けるための、勇気をくれる存在が。

優希
「………………愚かで、弱いね、私は。……君のような強さが、欲しいよ。」
そう、最後に一言だけ言って、私は涙を止めることに集中し始めた。