涙が、止まらない。
わかって、わかっているんだ。
今私が、どれだけ泣いたって無駄なのだということは。
泣いてばかりいないで、1人で立ち上がらなければならないと言うことは。

ひとみん
「……すまん。存在、価値…だっけ。」
しゃくり上げながら、質問に答える努力をする。
せめて。せめて記録してくれるのなら、思いのうちを全部ぶちまけてしまってもいいのではないか。そんなことを考えながら、とめどなく流れてくる涙を手袋に吸わせて。

ひとみん
「…2人の世話。飯作ったりさ、洗濯したり…してるとな。…バカみたいに、言い合い…してると、な?…アタシも、さ、…生きてていいんだって、毎日…っ思えてさ…?」
ふと、思い出す。
彼を連れて帰ってきたあの日、私は一体どんな風の吹き回しかと思ったよ。
けれども、君が、彼が増えてからの生活っていうのは、毎日が騒がしくって、休む暇もなくって。
2人が、私のご飯をおいしい!って言いながら、毎日食べてくれていたこと。
中途半端な数で作ったら、やいのやいの言いながら分けて食べてくれたっけ。
買い出し中、カートに乗せたカゴの上で、毎回あれ買うだの買わないだの、小さな戦争が起きていたこと。
結局、私が毎回折れちゃって、全部買うことになって…結構な散財額になっちゃってたんだよね。でも、その後ぐらいから大きめの仕事が来るようになったし、あんまり気にならなくなったのはよかったな。
2人ともでろんでろんに酔っ払った日、布団まで連れてってくれないか、一緒に寝てくれないか、なんてせがまれたこと。
結局、みんなでリビングで寝て…次の日体が痛くて悲鳴をあげたっけ。
2人が寝静まった後、たまに1人でちょっと贅沢をしちゃったりしたことも、思い出した。
次の日バレて"なんで起こしてくれなかったの!"って、怒られたっけ。
そんな、
休む暇もないような、騒がしい日常。
…キラキラしていた。とても輝いていた。本当に眩しかった。
私には、2人がいたから、できたことがたくさんあったんだ。

ひとみん
「それだけが!!!!」
ガァンッ!!

ひとみん
「………それだけが………………私の存在価値、だったんだ……」
ぶつけようのない感情を力任せに声に乗せて、荒げて。
派手な音がなるほどに、拳を、強く、強く椅子に叩きつけた。
大きく。…大きく欠けてしまったのだ。
決して、埋めることのできない、欠けができてしまったのだ。
守れなかった。大切だった、本当に大切だった。
繋ぎ止めてあげられなかった。引き留めることも叶わなかった。
…説得すら、できなかった。
…私は、彼に、彼らに、
何か、してあげられていただろうか?
3ピースで1つのパズルがあったとしよう。
その中の1ピースが欠けてしまったら?
その中の1ピースが大きく損傷してしまったら?
そうなると、非常に大きな穴が空いてしまう、そもそもパズルが成り立たなくなってしまう…なんてことは、誰しも簡単に想像できるだろうか。
今の私達は、そんな状態にある。と思う。
それに、私たちは単純で簡単なピースではなかった。
それぞれが、それぞれの独特の形を持って、お互いの凸凹を埋め合うような、そんな関係だった。
それがぐしゃぐしゃになってしまった今、その傷が簡単に埋まるわけもなかった。
胸が苦しい。頭が痛い。頼むから死なせてくれと心が叫んでいる。
けれども、私はまだ生きて、踏ん張らなくてはならない。
椅子を叩いて、赤くなってしまった手を握って。
神でも仏でも、今はなんでもいい。
お願いです。一生のお願いです。私に、立ち上がる力をください。
ただ、今しばらくは、大きく引き裂かれた胸の奥が痛い。
傷口が癒えるまでは、泣くことを、喚くことを、許して欲しいとも願う。
そんな強欲な私を、神や仏は許してはくれるのだろうか。