Chapter01-05

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
涙が、止まらない。
わかって、わかっているんだ。

今私が、どれだけ泣いたって無駄なのだということは。

泣いてばかりいないで、1人で立ち上がらなければならないと言うことは。

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ひとみん
「……すまん。存在、価値…だっけ。」

しゃくり上げながら、質問に答える努力をする。
せめて。せめて記録してくれるのなら、思いのうちを全部ぶちまけてしまってもいいのではないか。そんなことを考えながら、とめどなく流れてくる涙を手袋に吸わせて。

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ひとみん
「…2人の世話。飯作ったりさ、洗濯したり…してるとな。…バカみたいに、言い合い…してると、な?…アタシも、さ、…生きてていいんだって、毎日…っ思えてさ…?」

ふと、思い出す。

彼を連れて帰ってきたあの日、私は一体どんな風の吹き回しかと思ったよ。
けれども、君が、彼が増えてからの生活っていうのは、毎日が騒がしくって、休む暇もなくって。

2人が、私のご飯をおいしい!って言いながら、毎日食べてくれていたこと。
中途半端な数で作ったら、やいのやいの言いながら分けて食べてくれたっけ。

買い出し中、カートに乗せたカゴの上で、毎回あれ買うだの買わないだの、小さな戦争が起きていたこと。
結局、私が毎回折れちゃって、全部買うことになって…結構な散財額になっちゃってたんだよね。でも、その後ぐらいから大きめの仕事が来るようになったし、あんまり気にならなくなったのはよかったな。

2人ともでろんでろんに酔っ払った日、布団まで連れてってくれないか、一緒に寝てくれないか、なんてせがまれたこと。
結局、みんなでリビングで寝て…次の日体が痛くて悲鳴をあげたっけ。

2人が寝静まった後、たまに1人でちょっと贅沢をしちゃったりしたことも、思い出した。
次の日バレて"なんで起こしてくれなかったの!"って、怒られたっけ。

そんな、休む暇もないような・・・・・・・・・、騒がしい日常。

…キラキラしていた。とても輝いていた。本当に眩しかった。

私には、2人がいたから、できたことがたくさんあったんだ。

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ひとみん
それだけが!!!!

ガァンッ!!

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ひとみん
………それだけが………………私の存在価値、だったんだ……

ぶつけようのない感情を力任せに声に乗せて、荒げて。
派手な音がなるほどに、拳を、強く、強く椅子に叩きつけた。

大きく。…大きく欠けてしまったのだ。
決して、埋めることのできない、欠けができてしまったのだ。

守れなかった。大切だった、本当に大切だった。
繋ぎ止めてあげられなかった。引き留めることも叶わなかった。

…説得すら、できなかった。


…私は、彼に、彼らに、

何か、してあげられていただろうか?



3ピースで1つのパズルがあったとしよう。
その中の1ピースが欠けてしまったら?
その中の1ピースが大きく損傷してしまったら?

そうなると、非常に大きな穴が空いてしまう、そもそもパズルが成り立たなくなってしまう…なんてことは、誰しも簡単に想像できるだろうか。
今の私達は、そんな状態にある。と思う。

それに、私たちは単純で簡単なピースではなかった。
それぞれが、それぞれの独特の形を持って、お互いの凸凹を埋め合うような、そんな関係だった。
それがぐしゃぐしゃになってしまった今、その傷が簡単に埋まるわけもなかった。

胸が苦しい。頭が痛い。頼むから死なせてくれと心が叫んでいる。
けれども、私はまだ生きて、踏ん張らなくてはならない。

椅子を叩いて、赤くなってしまった手を握って。


神でも仏でも、今はなんでもいい。

お願いです。一生のお願いです。私に、立ち上がる力をください。


ただ、今しばらくは、大きく引き裂かれた胸の奥が痛い。
傷口が癒えるまでは、泣くことを、喚くことを、許して欲しいとも願う。
そんな強欲な私を、神や仏は許してはくれるのだろうか。
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