Chapter01-03

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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  ──カシャ


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「記録しました。有難う御座います」

言葉と共にシャッターが下りる。
たとい先のあなたの言葉がどのようなモノであったとしても、
コレは変わらずこの言葉を吐いたのだろう。
どれだけ荒唐無稽な事を言おうと、無関係な事を言おうと、
静かで落ち着いた声は、波打つ事が無い。

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「観察対象、次の情報を取得します」

冷たいガラスのひとみが、あなたに次のトイカケを差し出した。

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「──次は簡単な思考実験を行います。
 あなたの目の前に一人の人物がいるとしましょう

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彼は明らかに困難な状況にあり、助けを求めています。
 しかし、助けるとあなた自身に損害が生じます


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──あなたはどう行動しますか?
 理由や、其れに至る思考回路を開示してください」


──あなたはこの仮定にどう回答をしますか?

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「当機には質問と観測以外の権限を持ち得ません。
 従って、この人物を助けることは不可能です」


何とも思考実験のし甲斐の無い回答ではある。
流石に此れでは回答例として参考にならないと思考したか、
継ぎ足す様に次の言葉が繰り出される。

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「この問いを考えるにあたって、あなたは複数の要素を考慮する事になるでしょう
 自らの能力、損得勘定、社会倫理、共感性、恐怖心、
 過去の経験、未来への予測、その他不確定要素……
 どの要素に重きを置き、判断するかを考えると良いでしょう」


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「思考の順序、葛藤、迷い──それらも重要な要素です。
 『まず相手の安全、次に自己の損害への憂慮・保身行為、最後に社会的評価』等の様に、
 優先順位及び時間軸での解釈の変遷は実に多様性に富むものでしょう」

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「また、其の人物が『何者であるか』も重要です。
 幼子であるのか、年長者であるのか、あるいは敵対する者か、見知らぬ存在か、親しい者か──
 立場や関係性によって、きっとあなたの判断基準は変化します。

 それらの場合でもまた、此の状況を考えてみてください」



Answer
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ひとみん
「権限がないから助けられないって…お前ひどいな。そこは何がなんでも命令とか言いつけ破って助けに行くところだろ〜。」

まあ、できないものは仕方がない。これが映画なら、彼はむりくり権限の壁を突破してでも助けに行ってくれる可能性もある……、かも知れないが…ここは映画館じゃない。

さて…本題に戻ろう。

助けを求めてる人がいて…、助けた場合、自分に損害が生じることが明確だが…その時私はどうするか、か……そりゃあ、答えはもちろん決まっている。これ一択だ。

私は…あれからいくつか犯罪を重ねてきてしまった。裁かれたのは最初の一つだけだったが…今もまだ重ねているようなものだ。違法で仕事をしているのだから。

だから、一種の罪滅ぼしのようなところもあったりする。…まあ、これだけで司法なんかが許してくれるなら、法律なんかは要らないのだけれど。


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ひとみん
「…もちろん、当然。何があっても助けるに決まってる。あたしが助けられる状況なら、そりゃあ助けない手はないだろ?だって…」

当然の答えだ。昔だってこうやって………………

…あれ、誰かを助けた…気がする。そう、昔、目の前で何か____

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…!

……そうじゃないか。なんで忘れていたんだ…?

あの2人・・のこと…

…ああ…そうか…もしかしたら、ここは現実じゃないのかもしれない。

夢の中で現実と違うことを考えているなんてこと。ほら、よくある話だろ。
ならば、これもまた悪い夢なんだろう。

勝手に自分の中でそう結論づけて。そういうことならいろんなこと喋っちゃってもいいか。なんて好き勝手に解釈して。


今思うと、この時私は一種の回避行動なんかをとっていたのかもしれない。
それか、たくさんの思い出の整理だったのかもしれない。


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ひとみん
「そう、お前がいうような感じでさ…昔助けたやつがいたんだ。ヤバかったんだぞ?マジで!そいつさ〜…」

…そういうことがあったんだよ、なんて軽く話すノリで。
あぁ…そう、思い出せなかったこと、思い出せたから…かなりスッキリした。
2人のことを思い出したことで、たくさん…本当にたくさん、2人と過ごした記憶が蘇ってくる。

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ひとみん
「でよお、なんかそいつが突然、知らん男連れて帰ってきてやんのよ!びっくりしたよ、何があったんだよってさあ!」

…けれど、何かがつっかえている。胸の奥の方で…何か…

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ひとみん
「でもよお、打ち解けていくうちになんで連れて帰ってきたかわかるぐらいなやつでさ〜…」

……まあいいか。今は。
どうせまた今みたいにふと思い出すだろう。私は勝手にまたそう結論づけて、身勝手に思い出話をまた話し始めるのだった。
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