Chapter02-01

記録者: 楓 優希 (ENo. 188)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-07 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたが以前来たあの部屋と、まったく同じに見える。
壁に触れても感触は無く、すり抜ける事も出来なければ
もうひとつの椅子を見る事も叶わない。

──あなたが椅子に座れば、部屋は拡張されたように感じる。
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。

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「あれ?」

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「あはっ、すごい。君っていつの間に居たの?
 ちっとも気付かなかった!だってさっきまで誰も居なかった、
 君の音はひとつも聴こえて居なかった!きっと何かが君を導いたんだね」


奇抜な色彩を纏った少年が、にこやかに楽しげにあなたを見ている。
足をぶらぶらと揺らしながら、まるで軽やかな旋律そのもののようだった。
胸元に下げた横笛が、少年の小さな動きに合わせて微かに揺れ、
そのたび、金属が擦れ合う透明な響きが空気を震わせる。

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「ね、僕さ、訊いてみたい事があるんだけど、いい?
 きっとこれは風の導き、新しい楽章の予感!
 今まで聞いたことのない音に出会えそうな気がするんだ!」


少年はあなたに体を傾け、目を輝かせる。
質問を投げかける瞬間でさえ、ひとつの“旋律”を紡ぐように。

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「──君はさ、大人になるってどういうことだと思う?


──あなたは“大人”とは何だと思いますか?

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「僕はね、毎日新しい音を探してる。
 繰り返しばっかりの退屈な道ばっかり歩いてたら、その曲は死んじゃうでしょう?」

空中に弧を描くように指先を動かす。
まるで目に見えない五線譜に、音を刻むみたいに。

その仕草に合わせて、笛が揺れて微かに音を鳴らしたような気がする。
それが空耳なのかどうか、判断できない。

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「僕から見たら大人って、死んだ曲をずっと流してる人たちだ。
 一体何が楽しくてそんなことをしてるのか、僕には全然分かんない!

 君はどう思う?大人ってもしかして僕が知らないだけでもっと楽しいものなのかな?」

Answer
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優希
「………………ッ、あれ…?」

嗅いだことのある空気の匂い。
耳に慣れた静かな空間。
見たことのある白。
そして、とてもデジャヴ感のある、椅子。

…多分、私は前に、ここにきたことがある。

なんけれども………前来たときの事が、イマイチ思い出せない。
ただ…カメラのような何かがあった気がする、それぐらい、ぼんやりとしていた。
ひとまず…私は、前もこの椅子に座った気がする。

曖昧な記憶に従って、椅子に着席する。
すると、見えたのは、前回とはまた違う…
とても色鮮やかな衣を纏った少年だ。

…そう、前回の相手は…そこそこガタイが良かった…気もする。

そんなことを考えたりしていると、目の前の少年は、軽快に、かつフレンドリーにこちらに向かってトイカケを投げ掛けてきた。

彼の自己紹介はなしだが…年齢が近いように見えるその風貌、そしてそのフレンドリーさに絆されているような自分がいて、少し笑ってしまう。
……とても単純だな。私って。

こう言う時に、まだ自分が"子供"であることを知らしめられる。
質問の内容は大人になるってどう言うことか、だが…君と同じ、子供の思う大人でよいのだろうか。
まあ、質問をくれたのだからいいのだろう。それならば…と、私は楽しげに口を開いた。

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優希
「大人になる…か…。キミは、大人になることを…何かの繰り返しの、同じ道を歩むだけの死んだもの…だと言ったかな?そうやってキミは思っているようだけれど…私は違うと考えているよ。」

そう。私からみた、大人という存在。それは…

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優希
「私の思う大人は…自分たちの思う、それぞれの"自由"を手に入れた存在だと思っている。」

研究に熱心すぎて、周りを見失うあの人だったり。
また、それに振り回されながら笑うあの人だったり。
そんな人たちと付き合いながらも、日々を真面目に取り組む人たちだったり。

たくさんの"大人“という像が、私の中にはあった。
そのすべての大人をひっくるめて、説明できる一言と言えば、自由という言葉しかないだろう。

そう。自由を手に入れた存在。私たち子供よりも、遥かに数多くの事が出来る。

………キミは、繰り返し続けると、その曲は死んでしまう…と言ったが、私にはそうは思えない。

まず、前提として、好きなものは繰り返したくなるものだと、私は思っている。

その好きなことを繰り返すことで、慣れればまた、新しい音の回しや、曲のアレンジだって。
子供であれば、演奏に必死で、己の好きを見つけるどころではないだろう。そんなんじゃアレンジなんか夢のまた夢。
けれども、何度もいろんな音を演奏して、だんだん上手になって、大人になって。そうすれば演奏にも余裕が出てくるし、やろうと思えば、幅なんていくらでも広げられるだろう。

例えば、ちょっと転調させてみたり。突然テンポを変えてみたり。
たまには、いつもと違う音を出してみたり。そんなところだって、なろうと、成そうと思えば、いくらでも自由自在だろう。

まあ、尤も…私の周りの大人は、その音色が自由すぎて、周りに迷惑をかけるような人たちばかりだったのだけれど。

…まあ、更に言えば…私はその迷惑を、私は今被っている、というわけなのだけれど…それはまた別のお話だから…

今はしまっておこう。

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優希
「私は…色んなことに縛られる子供よりも、自由な大人でありたいんだ。」

正直、子供から見た大人なんて、せいぜい君のようなイメージか、私のようなイメージの両極端だろう。

多分、やろうと思ってもできないことだってたくさんあるし、やりたくても何かが邪魔をしてできないこともあるのかもしれない。けれども、今ぐらいは、と、私は、私の中の"理想だった人達"でできた大人像、というものを語っていた。

多分…いいや、わかっている、大人が、君がいうように、私が思っているほど自由ではないことも。あれほど自由な大人は…多分、生活をしようと思っている大人の中では一握りぐらいしかいないのではないだろうか。

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優希
「まあ、色々思うところはあるんだけれど…今のところはこんな感じかな。」

ひとまず、止まらなくなりそうだったし、と、私は一旦答を切り上げた。