
「へえ……」

「初めまして、だな!
今回は自己紹介なしでいいの?
まあ正直そっちの方が楽だよな〜」

「あ、別に気にしないでこっちの話だから!」
少し複雑そうな顔をして青年は席に座っていた。
しかし、向かいに現れた姿が
以前とは異なるものであることに気づけば、
お得意の”いつもの調子”で笑いかける。

「それにしても大人になる、かあ」
「正直よくわかんねーよなあ、年は勝手に取ってくけどさ」
「成人したら急に大人になるってもんでもないだろうし」
青年はまだ成人には至っていない。
しかし、それも遠くない話ではあるようだ。
少なくとも相対する少年よりも大人には近いのだろう。

「ただ、そうだなあ……
俺が思う大人っていうのは──」

「自分の利益や地位を守ることに必死な奴、かな……」
軽く、子供のようにわからないよと首を傾げながらも
どこか様々を見通した大人のように冷たげな視線で呟く。
言葉はまるで打ち捨てられたもののようだった。

「退屈そうとか、死んだ音とかはよくわかんないけど
少なくとも俺から見れば楽しそうだとは思うよ〜?」

「だっていい地位につけたら金も酒も食い物も好き放題だ!」
「狡賢く旗色の良さそうな相手について回れば楽々だろ?」
羨ましいよな、と同意を求めるような言葉には
心のようなものは込められていなかった。
冷たく凍ってしまった言葉がテーブルの上に落ちていく。

「もちろんそれを手に入れるには
悪知恵と腹芸が大事なんだろうけど〜」

「大人になったらそういうの
勝手に身についてくるんじゃない?」
「だってどいつもこいつもそういうやつばっかだしさ!」
にこにこと笑顔は浮かべたまま、
声さえ届かなければ楽しげな談笑の様子だ。
しかし青年の口から零れ落ちる言葉はどれも棘がある。
彼にとって大人という人々は好ましい存在ではないのかもしれない。

「……あー、でも
前、旅行みたいな感じで行ったとこにいた大人は……」

「普通にいい人だったなあ、面白いっていうか変っていうかさ
別に他人を出し抜くことばかり考えてる
ってわけでもなさそうで……」

「もしかしたらあの人たちは子供だったのかも?」
思い出した別の大人の姿に青年は少し言葉の雰囲気を和らげる。
誰もが”そう”あるわけではないのかも、と小さく呟いた。

「まあでもやっぱわかんねー、が解答かな!
だって俺まだギリ子供だし?」

「大人になってみなきゃこういうのって
わかんないんじゃない?」