鳴らされた音。
その感覚に、少年は警戒の目を向ける。
貴方から自由なる風の気配を感じたが。
今、向けられているのは、痛みをもたらす刃のようだ。

「………………」
少年はその目を、真っ直ぐに見つめ返した。

「“正しい”は人それぞれであるという話を、
私は先程したね」

「それは“悪い”も然りだ。
私の思う“悪い”が、
他の人に該当しないこともある」

「それを踏まえて…………」
思い返す。
己は何を思って、この国を変えたいと考えたのか?
変えたいものがあったから、
何とかしたい“悪”があったから、改革を志した。
それを辿れ。己の原点は────。
檻に繋がれ利用された過去を思い出す。
あの頃、己を傷付けた長兄は“悪”だったろう。
何故、そのようなことをされたのか?
この魔導王国の、魔法至上主義もその一因か。

「私にとっての悪とは──差別、だ」

「嫌いな人間がいる、
苦手な人間がいるのは仕方のないことだ。
これだけ様々な“正義”があるんだ、
思想の合わない人間もいるだろうさ」

「合わないならば離れるか、
表面上だけでも穏やかに過ごすか、
或いは全力でぶつかるかすれば良い」
「他にも色々とやり方はあるだろう」

「そんな風に自分から動くことをせず、
波風立てない努力もせず、
一方的に蔑み虐げてくる奴らは──
卑怯だと、思わないか」
その差別を国単位でやっているのが魔導王国だ、
と王は語るのだ。

「だから私は法を敷いた。
これまでそうやって差別される側であった
非魔法民にも人権を認め、
彼らを侵害した人間には
身分関係なく罰を与えられる法を」

「魔法が使えない彼らもまた人間だ。
私は派手な属性魔法なんて使えない。
それでも、私だって人間だ」

「“普通”とは違う。それだけで──
誰かを差別して良い理由には、ならない」
青の瞳に、強い信念の炎が瞬く。

「そして、何故彼らは
そのようなことをするか?
の問いだが…………」

「そもそも魔導王国では、
非魔法民への差別が
常識としてまかり通っている。
その“常識”を疑うのは簡単なことではない」

「だから私は
これまでの特権階級の人たちのことは、
まだ、まだ、許せる」
しかし、と王は続ける。

「……今はもう、この私が、
革命王が、『それはおかしい』と
突き付けて改革を行っている。
それを理解した上で尚、
非魔法民差別を続けるのであれば……」

「それは彼らの心が、
“弱い”ということの証左だ」
弱いからこそ、誰かを虐げずにはいられないのだろうと。
王は、王は、語るのだ。

「…………これが、
私の考える“悪い”だ。
お前への答えになったかな」