Chapter02-01

記録者: 夏揺 響 (ENo. 56)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたが以前来たあの部屋と、まったく同じに見える。
壁に触れても感触は無く、すり抜ける事も出来なければ
もうひとつの椅子を見る事も叶わない。

──あなたが椅子に座れば、部屋は拡張されたように感じる。
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。

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「あれ?」

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「あはっ、すごい。君っていつの間に居たの?
 ちっとも気付かなかった!だってさっきまで誰も居なかった、
 君の音はひとつも聴こえて居なかった!きっと何かが君を導いたんだね」


奇抜な色彩を纏った少年が、にこやかに楽しげにあなたを見ている。
足をぶらぶらと揺らしながら、まるで軽やかな旋律そのもののようだった。
胸元に下げた横笛が、少年の小さな動きに合わせて微かに揺れ、
そのたび、金属が擦れ合う透明な響きが空気を震わせる。

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「ね、僕さ、訊いてみたい事があるんだけど、いい?
 きっとこれは風の導き、新しい楽章の予感!
 今まで聞いたことのない音に出会えそうな気がするんだ!」


少年はあなたに体を傾け、目を輝かせる。
質問を投げかける瞬間でさえ、ひとつの“旋律”を紡ぐように。

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「──君はさ、大人になるってどういうことだと思う?


──あなたは“大人”とは何だと思いますか?

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「僕はね、毎日新しい音を探してる。
 繰り返しばっかりの退屈な道ばっかり歩いてたら、その曲は死んじゃうでしょう?」

空中に弧を描くように指先を動かす。
まるで目に見えない五線譜に、音を刻むみたいに。

その仕草に合わせて、笛が揺れて微かに音を鳴らしたような気がする。
それが空耳なのかどうか、判断できない。

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「僕から見たら大人って、死んだ曲をずっと流してる人たちだ。
 一体何が楽しくてそんなことをしてるのか、僕には全然分かんない!

 君はどう思う?大人ってもしかして僕が知らないだけでもっと楽しいものなのかな?」

Answer
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「……またこの部屋、か?」
夢に見た部屋。
同一の景色。

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「いつのまに明晰夢とか
 見れるようになったんだ、俺……」
蝉はそう判断し己を訝しんだ、
残念ながら、違います。

ともあれ、ここに訪れた際の作法はきっと同じはず。
椅子に腰掛ける。
きょうはあのときほどの疲れもなく、
良かったなあと心の中で思ったりもした。

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「……おっと」
作法は間違っていなかった。
だが応対してくれる人物が違ったようだ。

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「初めまして、だな。
俺のほうからも君が突然現れたように見えたが、
やはりそんな感じか」

以前の経験と、相手が子供の姿をしていることも合わさり、
口調はさらに柔らかく。
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「……大人になること、か」
少し考え込む仕草を見せ。

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「責任を負う立場になること、だと俺は思う」
そう、自分なりに答えを。

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「責任を負うのは、とても大変だ。
 その範疇でなにかあれば、
 己が始末をつけるのが当たり前になる。
 ……能力的にも、精神的にも
 子供には負えないものになるんだ」

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「だからこそ、
 任されたものがあることは
 明確に大人の指標となるんじゃないか。
 俺は、そう思うよ」