Chapter02-01

記録者: ルイ=テネーブル (ENo. 46)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたが以前来たあの部屋と、まったく同じに見える。
壁に触れても感触は無く、すり抜ける事も出来なければ
もうひとつの椅子を見る事も叶わない。

──あなたが椅子に座れば、部屋は拡張されたように感じる。
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。

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「あれ?」

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「あはっ、すごい。君っていつの間に居たの?
 ちっとも気付かなかった!だってさっきまで誰も居なかった、
 君の音はひとつも聴こえて居なかった!きっと何かが君を導いたんだね」


奇抜な色彩を纏った少年が、にこやかに楽しげにあなたを見ている。
足をぶらぶらと揺らしながら、まるで軽やかな旋律そのもののようだった。
胸元に下げた横笛が、少年の小さな動きに合わせて微かに揺れ、
そのたび、金属が擦れ合う透明な響きが空気を震わせる。

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「ね、僕さ、訊いてみたい事があるんだけど、いい?
 きっとこれは風の導き、新しい楽章の予感!
 今まで聞いたことのない音に出会えそうな気がするんだ!」


少年はあなたに体を傾け、目を輝かせる。
質問を投げかける瞬間でさえ、ひとつの“旋律”を紡ぐように。

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「──君はさ、大人になるってどういうことだと思う?


──あなたは“大人”とは何だと思いますか?

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「僕はね、毎日新しい音を探してる。
 繰り返しばっかりの退屈な道ばっかり歩いてたら、その曲は死んじゃうでしょう?」

空中に弧を描くように指先を動かす。
まるで目に見えない五線譜に、音を刻むみたいに。

その仕草に合わせて、笛が揺れて微かに音を鳴らしたような気がする。
それが空耳なのかどうか、判断できない。

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「僕から見たら大人って、死んだ曲をずっと流してる人たちだ。
 一体何が楽しくてそんなことをしてるのか、僕には全然分かんない!

 君はどう思う?大人ってもしかして僕が知らないだけでもっと楽しいものなのかな?」

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「おお」
気のない一声。
見慣れた部屋。

そういえばやってもみてなかったなぁと思い
壁に触れてみるが感触はないのに手がそこを抜けていくこともない。
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「おもれぇ。だいぶ遊べそうだなコレ」
この男、壁で遊んでいる。
そんなにオモロが欲しかったのか。
そんなにオモロがないと生きていけないか。

……まあ、そんな振舞いを意味なくしているわけでなし。
一度来たことがあるからこそ、椅子に座ったあとは想像がつく。
だからこそ敢えてした行動ではあった、が。

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「お」
……少年?
このあいだまみえた魔法生物?とはまったく違う雰囲気、装い。
あまりに楽しそうな雰囲気。
人間にしか見えない、幸福そうな、
男から見ればそういうところがムカつく子供。
相対する人物が、変わっている。

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「なんだよ俺の音って。気配かなんかの例えのつもりか?
 導きってなんだ、まったくポエミーぶりやがって!」
初対面にして全力で大人げを放り捨てていく男。
流石ロクデナシのクズを自称するだけは、あるね……。

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「楽章、ねえ。はあ……アレか。
たぶん詩人の卵ってとこか、あんた」
子供は嫌いだが詩曲は嫌いではない。
どころか、だいぶ好きなほうだ。
ゆえに、機嫌もけろっと結構治って少年の話を聞く姿勢になる。
チョロい。

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「大人になるってどういうことか、だぁ?」
あ、また不機嫌だ。
ペース乱されている賊である。

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「残酷な現実を知ることじゃねえの?
ま、それで大人になれるかどうかなんて
俺が知ったこっちゃねーけど」
事実、知っても大人になれていないのがこの男なのだから。